Photo by Kazma Kobayashi
7月27日(日)GREEN STAGE
フジロック最終日のGREEN STAGE、日も沈み始めておりまったりとした時間が流れる中、針のようなラップが鼓膜に侵入してくる。ギターとベースとドラムの3ピースを従え、リトル・シムズが切れ味の鋭いロックチューン「Thief」と共にステージへと姿を現した。たっぷりと焚かれたスモークをギターの妖しいリフと丸裸のリリックが通り抜けてくる。観客のボルテージを沸々と引き上げるとシームレスに「Flood」へと接続、今年リリースされた最新アルバム『Lotus』の冒頭部と同じ流れであり、彼女の現在のモードが既にこの2曲で示される。バンドセットの躍動感はタムの重々しい響きによって強調、ドラムセットに座っているのはブラック・ミディをはじめロンドンの重要プロジェクトに幾つも関わっているモーガン・シンプソンだ。
「ありがとさま〜」と弛緩した表情で日本語のMCもこなすシムズ。「SIMZ 3」のプリントを配したサッカー日本代表ユニフォームを着用し、気ままな姿を苗場の舞台でさらけ出す姿には、『Lotus』で表現されていた自己との会話と世界へのポジティブな展開というテーマの答えが示されているかのようだった。その前々作となる『Sometimes I Might Be Introvert』から「Two Worlds Apart」と「I Love You, I Hate You」を連続で繰り出し、ブリージンな縦ノリを生み出すと、「Young」でステージを端から端まで小走りで駆けながら、軽薄ながらも切れ味のあるリリックを積んでいく。
ここでバンドが一旦捌け、リトル・シムズが一人でオーディエンスと対峙する時間に。手始めに投下された「Venom」の唸るベースラインとスキルフルなラップの対比でその実力を苗場のオーディエンスたちに周知させると、モッシュを作り出しフロアの温度を数段階引き上げた。続くのは最新EPシリーズ『Drop 7』の楽曲群、ジャクウォブによるどこかトライバルなUKベースが容赦無く連打される。ステージの上のシムズは激しくスピットし、激しく踊り、誰よりもビートを楽しんでいた。
バンドが戻ると「Selfish」からインティメイトに再開。コーラス部ではシンガロングを煽り、柔らかな楽曲を通じてリスナーたちとのコミュニケーションを図る。やはり今日のリトル・シムズからはリラックスしたムードが伝わってくる。「Lion」に「Point And Kill」とオボンジャイヤー参加のプリミティブなダンスチューンではリズムセクションと呼応しながら、巧みにリズムの上を高速のライミングで乗りこなしていく。
ショーの終盤でトーンを落とし、実直に語りかけたのは「Free」だ。諧謔と憂鬱が交互に語られ、自らの成長する過程を悩みながらも楽しむ『Lotus』の核となるようなこの曲を、帽子を脱ぎ、両手を後ろに回し、スタンドマイクで吐露する姿に、誠実なUKラップ界のスターの肖像が見てとれた。しかし彼女は同時に、自らの渇きを満たすための熱狂も欲望している。ラストは満面の笑みで「Gorilla」をドロップ、グルーヴィーな縦ノリのうちにショーを締め括った。
Text by 風間一慶
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7月27日(日)GREEN STAGE
フジロック最終日のGREEN STAGE、日も沈み始めておりまったりとした時間が流れる中、針のようなラップが鼓膜に侵入してくる。ギターとベースとドラムの3ピースを従え、リトル・シムズが切れ味の鋭いロックチューン「Thief」と共にステージへと姿を現した。たっぷりと焚かれたスモークをギターの妖しいリフと丸裸のリリックが通り抜けてくる。観客のボルテージを沸々と引き上げるとシームレスに「Flood」へと接続、今年リリースされた最新アルバム『Lotus』の冒頭部と同じ流れであり、彼女の現在のモードが既にこの2曲で示される。バンドセットの躍動感はタムの重々しい響きによって強調、ドラムセットに座っているのはブラック・ミディをはじめロンドンの重要プロジェクトに幾つも関わっているモーガン・シンプソンだ。
「ありがとさま〜」と弛緩した表情で日本語のMCもこなすシムズ。「SIMZ 3」のプリントを配したサッカー日本代表ユニフォームを着用し、気ままな姿を苗場の舞台でさらけ出す姿には、『Lotus』で表現されていた自己との会話と世界へのポジティブな展開というテーマの答えが示されているかのようだった。その前々作となる『Sometimes I Might Be Introvert』から「Two Worlds Apart」と「I Love You, I Hate You」を連続で繰り出し、ブリージンな縦ノリを生み出すと、「Young」でステージを端から端まで小走りで駆けながら、軽薄ながらも切れ味のあるリリックを積んでいく。
ここでバンドが一旦捌け、リトル・シムズが一人でオーディエンスと対峙する時間に。手始めに投下された「Venom」の唸るベースラインとスキルフルなラップの対比でその実力を苗場のオーディエンスたちに周知させると、モッシュを作り出しフロアの温度を数段階引き上げた。続くのは最新EPシリーズ『Drop 7』の楽曲群、ジャクウォブによるどこかトライバルなUKベースが容赦無く連打される。ステージの上のシムズは激しくスピットし、激しく踊り、誰よりもビートを楽しんでいた。
バンドが戻ると「Selfish」からインティメイトに再開。コーラス部ではシンガロングを煽り、柔らかな楽曲を通じてリスナーたちとのコミュニケーションを図る。やはり今日のリトル・シムズからはリラックスしたムードが伝わってくる。「Lion」に「Point And Kill」とオボンジャイヤー参加のプリミティブなダンスチューンではリズムセクションと呼応しながら、巧みにリズムの上を高速のライミングで乗りこなしていく。
ショーの終盤でトーンを落とし、実直に語りかけたのは「Free」だ。諧謔と憂鬱が交互に語られ、自らの成長する過程を悩みながらも楽しむ『Lotus』の核となるようなこの曲を、帽子を脱ぎ、両手を後ろに回し、スタンドマイクで吐露する姿に、誠実なUKラップ界のスターの肖像が見てとれた。しかし彼女は同時に、自らの渇きを満たすための熱狂も欲望している。ラストは満面の笑みで「Gorilla」をドロップ、グルーヴィーな縦ノリのうちにショーを締め括った。
Text by 風間一慶
会場にて完売したTシャツの受注生産受付中!
Little Simz - Fujirock 2025 T-Shirt (White)
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=15220
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