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Oneohtrix Point Never / 電子音楽を五感で体感すべき理由のすべてがここに凝縮!OPNの黄金時代が、また始まろうとしている。

2024.02.29

Oneohtrix Point Never / 電子音楽を五感で体感すべき理由のすべてがここに凝縮!OPNの黄金時代が、また始まろうとしている。

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Oneohtrix Point Never / 電子音楽を五感で体感すべき理由のすべてがここに凝縮!OPNの黄金時代が、また始まろうとしている。

 ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(以下、OPN)ことダニエル・ロパティンの最新作『Again』を伴うワールドツアーの初演が、東京・六本木で行われた。つまり、世界で初めてOPNの最新のモードを目撃したのが日本の人々ということだ。そしてそれは誰にも予想のつかない、想像をはるかに超えた、とんでもない一夜だった。最新作にハマった人はもちろん、OPNを初期から追い続けている人にとっても強烈な体験だったに違いない。文字通りこれまで誰も見たことのない演出は、エレクトロニック・ミュージックにおけるライブの新たな方法を提示していた。正直、いくら言葉を尽くしたところでOPNが創り上げたあの空間を言い表すことは不可能だが、なんと本日は大阪公演が控えているので、足を運ぶことのできる人々は今から大急ぎで梅田クラブクアトロへ直行し、できれば終演後にこのページを再訪してほしい。
 ただ、優れた映画にとって「ネタバレ」など大したものではないように、OPNが見せたパフォーマンスも事前に何を聞かされようが揺るがない力を持っているのも事実だ。

 2024年2月28日、会場は六本木に位置するEX THEATRE ROPPONGIだ。シアターというだけあってもちろん映画館としても利用されており、地下3階から地下1階までが吹き抜けの大空間だ。この日のフロアはスタンディングで、そこは6年ぶりのOPN来日公演をいまかいまかと待ち受ける熱気のこもった人々でいっぱいだった。スティーヴ・ライヒ「It's Gonna Rain」の不穏なループが流れる中で響き渡る、「本日はソールドアウトなので前方に詰めてください」のアナウンスがややシュールだった。

19時の開演時間通りに登場したのは日本公演のみのスペシャルゲスト石橋英子と、『Again』にも参加しているジム・オルークの2人だ。それぞれラップトップを机に置き、真っ暗闇の中で音を鳴らし始める。まるで森の奥で鳴り響く鈍い雷のような不定形なサウンドに、石橋が時折フルートを重ねる。誰もが忘我して立ち尽くすほかない40分間の濃密なアンビエント空間。その場にいる人々の波長がゆっくりと整えられたような感覚があった。

 転換後、舞台が猛烈なスモークに覆われ、ついにOPNが登場する。ステージ上に立つのはMV制作などで活動を共にするフランス出身のビデオ・アーティスト、フリーカ・テット(Freeka Tet)である(正直に告白すると筆者はこの男が誰なのか終演後まで分からなかった)。

 いきなりのアルバムタイトル曲「Again」に、会場は静かな興奮に包まれ、敬愛するDJ Premierからの影響がドラムに強く表れた「World Outside」を続けざまに披露。OPNはボコーダーを通して「ロボ声」で歌い、「Good evening」とロボ声で観客に挨拶した。そして背後の巨大なスクリーンに映し出される「AGAIN」というタイトル。つまりここまではいわゆるアヴァンタイトルだったのだ。すでにOPN劇場は始まっていた。

 最新のモードで来るかと思いきや、『Again』のテーマが「観念的自叙伝」だからなのか、まさかの2009年の「Time Decanted」を披露。他にも同年発表の「Zones Without People」、そして2011年の人気作『Replica』から「Power of Persuasion」など、キャリアの初期に位置する作品も披露していた。そのどれもが懐古的ではなく、圧倒的な音響で鋭く耳に滑り込み、脳内を刺激してくる。

 ここで、スクリーンに映る「A Barely Lit Path」のMVに登場したロボット(?)と思しきのっぺらぼうの「操り人形」が気になる。その人形はOPNの動きと同期して動いており、OPN自身を模していると思われる。あまりによくできた映像なので、誰がいつ作ったのか疑問に思っていると、実は隣にいるフリーカがその場で動かしている映像が中継されたものだったのだ!精巧に作られたDJブースや機材のミニチュアを、OPN人形(と呼ばせてください)が演奏している(ようにフリーカが動かしている)。つまり、本物のOPNと、フリーカが操るOPN人形によるライブが同時に行われているとも言えるのだ。つまり、OPNはステージ上で分裂している。

 また、その映像にはフリーカが制作したと思しきエフェクトが、楽曲の展開と同期しながら表示される。アニメ、漫画、映画のワンシーン、数式のようなものまで、記憶の断片のようなものが画面に次々と現れては消えていく。何となくそこには物語があるようにも思えるが、あまりに断片的で読み取ることが難しい。それでも目が離せないのは、この映像がOPNの楽曲に完璧に「当て書き」されているからだ。

 この日唯一といっていいほど激しく踊れる「Mutant Standard」というひとつのクライマックスを経て、「Power of Persuasion」と「Imago」にたどり着く。OPN人形はいつの間にか髭をたくわえた顔を獲得していた。そこから『Again』の楽曲が連発される。「Krumville」ではソニックユースのリー・ラナルドが奏でる人間味あふれるギターに合わせて、フリーカがミニチュアのギターをOPN人形に弾かせていた。続いて「Memories of Music」、「Nightmare Paint」と続き、「A Barely Lit Path」で何度目かのクライマックスを迎える。暗く、長い道を抜けるとOPNの2010年代の金字塔『R Plus Seven』から「Boring Angel」だ。そしてなんと大人気曲「Chrome Country」を10分近く引き延ばして披露するというたまらないセットで幕を閉じた。

 アンコールもあった。「Nothing's Special」と「Animals」という「半自伝トリロジー」の最初の2作から披露したのだが、スクリーンに映る青いエイリアンや、赤ジャージを着た中年男性など、謎はますます深まる。最後の最後は『Age Of』から「We'll Take It」だ。このときだけ映像の趣向も大きく変わり、拘束された人形は最終的にミイラのような蝋人形になる。非常に意味深だが、それが何を表しているのかはそれぞれが持ち帰って考えるべきなのだろう。

 よく「映画のような」と音楽を形容することがあるが、OPNが提示したのは映画そのものだった。いや、あるいは映画ではない何か別の芸術形態だったような気もする。演劇と言った方が近いだろうか?まあ、答えは分からないが、歴史に名を残す偉大な作家は、定まった解ではなく謎や疑問を提示するものなのだ。とにかく頭を活性化させられるようなひとときだった。電子音楽を五感で体感すべき理由のすべてがそこに詰まっている。OPNの黄金時代が、また始まろうとしている。

text by 最込舜一

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