Artist of the Year

Artist of the Year
Oneohtrix Point Never



現在、世界最先端の音楽家としてOneohtrix Point Never(以下OPN)ことダニエル・ロパティンの名を挙げることにいささかの躊躇もない。ここ数年の彼の活動を見てもそれは明らかだろう。かの故・坂本龍一からもその独創的な音楽性について賛辞を受け、リリースの度に世界中の音楽メディアの話題となり議論を呼ぶ自身のアルバム作品もさることながら、今やアメリカ音楽界最大のスターのひとりでもあるザ・ウィークエンドをはじめ、2023年の顔でもあるキャロライン・ポラチェック、今最も才能溢れるSSWとして評判のサッカー・マミー、ポップスのフォーマットで音楽における実験性を問い続けるチャーリーXCXのプロデュースを行い、そのいずれも成功に導いていることは、この幅広い音楽性の中で驚くべきことだ。それだけではない。彼は映画やドラマシリーズのサウンドトラックを手掛けることもあり、アメリカの映画界で最も注目されている気鋭の監督といってもいいサフディ兄弟の映画『グッド・タイム』(2017年)と『アンカット・ダイヤモンド』(2019年)のサウンドトラックを担当しており、前者ではなんとカンヌ映画祭のサウンドトラック賞を受賞している。また、『スター・ウォーズ:ビジョンズ』シーズン2の第8話「穴」や、エマ・ストーン主演のブラック・コメディ『The Curse(原題)』(ネイサン・フィルダーとベニー・サフディが制作!)といった話題のドラマシリーズのサウンドトラックも手掛けている。他にも、シャネルのコレクション・ショーや、ザ・ウィークエンドによるスーパーボウル・ハーフタイムショーの音楽監督も務めており、その八面六臂の活躍には驚かされるばかりだ。メインストリームやアンダーグラウンドを問わず、越境的な活躍を続ける彼の音楽は、最新のポップ・カルチャーの至る所に痕跡を残し、その存在感は圧倒的だ。



そんなOPNは今年、最新作『Again』をリリースした。本作は彼の近作『Garden of Delete』(2015年)、『Magic Oneohtrix Point Never』(2020年)に続く半自伝的作品だ。近年の彼はそれぞれの作品で、自身がその生い立ちの中で影響を受けた音楽を反映させてきた。OPNの半自伝は、ある意味では彼が人生の中で聴いてきた断片的なアメリカ音楽史でもある。彼はそれらの断片を、自身が培ってきたエレクトロニック・ミュージックをベースにしながら、コラージュ的に作曲してきた。そこには過去も現在も未来も混ざりあった独特の時空が存在している。彼の音楽を聴いて懐かしい気持ちになったかと思えば、未知の感覚に捉われたような気分になるのはそのせいだ。アメリカ音楽史の奇妙なアーカイヴがそこには出来上がっており、ある意味ではSF的な音楽表現といってもいいのかもしれない。



『Again』の特徴をひとつピックアップすると、生の室内楽とOPN自身がプログラミングしたストリングスが並置されていることだ。このことは、いくつかの古くて新しい問いをリスナーに放つことになる。その問いは、例えば「人と機械の違いは?」「人と機械の共存はどのように可能か?」といったものだ。AIの技術的発展が広く知れ渡り実用化され、前述の問いがまさに現在の問題となっている今、『Again』はそのサウンドに極めてアクチュアルなクエスチョンを世界に対してぶつけている。こういった問題提起をSF的なサウンドに反映させることこそが、OPNが音楽シーンの中で異彩を放ち、現在のポップ・カルチャーで常に注目の的であり続ける理由なのだ。音楽を作り、それを様々な形でリスナーに届けたうえで、容易に噛み砕けないような問いを与えることができる数少ない音楽家が、彼の他に何人いるだろうか。OPNだけが提供できる答えのないエンターテイメントが、2023年最も注目すべき音楽であったことは間違いない。



八木皓平
:@lovesydbarrett

Summary of 2023

 テイラー・スウィフトやビヨンセが記録的なツアー興行収入を叩き出し、U2出演の次世代型コンサート会場「Sphere」が度肝を抜き、ブライアン・イーノがキャリア初のソロ・コンサート・ツアー「Ships」を実施した2023年。ここ日本では、設立15周年を迎えた〈Brainfeeder〉軍団が夏フェスを席巻した。ノウワーとしても新作を発表したルイス・コールがフジロックを沸かせ、サマーソニック/ソニックマニアではフライング・ロータス&サンダーキャットの最強コンビが揃って怪演。YOASOBIや新しい学校のリーダーズ(RINはリトル・シムズとケニー・ビーツがお気に入りと公言!)など日本人アーティストの海外進出が加速するなか、長谷川白紙の同レーベル契約も新時代の到来を告げる出来事だった。



 ジャングル、ペギー・グー、(来日公演も好評だった)アークティック・モンキーズなど、インディー・シーンからも各方面でヴァイラル・ヒットが生まれたこの一年。NewJeansの楽曲制作にエリカ・ド・カシエール、スメーツが携わっていたのも話題となったように、国境やジャンルの境界線はますます曖昧になってきている。そのなかで大豊作だったのがUK二大名門の〈Warp〉と〈Ninja Tune〉。ケレラ、カッサ・オーバーオール、ダニー・ブラウンというR&B〜ジャズ〜ヒップホップの異端児、魔性のグラム・スターことイヴ・トゥモア、UKロックを刷新するブラック・カントリー・ニュー・ロードやスクイッド、生々しくも未来的なシューゲイズ・サウンドを奏でるユール、祝祭的なスピリチュアル・ソウルを打ち鳴らすヤング・ファーザーズと傑作が目白押し。近年でも類を見ない充実ぶりだった。

 もちろん、この両レーベルは鬼才OPNを筆頭に、ラテンとハウスを鮮やかに融合させるソフィア・クルテシス、ディープで名状しがたい新境地を開拓したアクトレス、DJコッツェとのコラボが奇跡的だったロイシン・マーフィー、そしてエイフェックス・ツインのカムバック作まで、先進的なエレクトロニック・ミュージックも数多く発表。UKのダンス・シーンは次なる局面を迎えており、アンダーワールド級のポップ・ポテンシャルを秘めるオーヴァーモノ、IDM〜エモ〜マスロック〜の再解釈が光るロレイン・ジェイムスなど、他のレーベルからもスター候補が続々と登場している。クィア・クラブ愛あふれるロミー(The xx)のソロ作も忘れがたい。



 ロンドンのクラブ・シーンから台頭したサンファの最新作『LAHAI』には、前衛音楽家のティルザなども巻き込み、UKジャズ周辺の多様性を体現するスピーカーズ・コーナー・カルテットのクウェイク・ベース、自身も年間ベスト級の傑作を物にしたドラマーのユセフ・デイズ、ブラック・ミディの屋台骨を担うモーガン・シンプソン、待望のデビュー・アルバムを発表した韓国のイェジらが参加。ミニマルかつマジカルな音像は息を呑むほど美しく、日本のミュージシャンからも絶賛の声が絶えない。その一方で、日本での知名度は今ひとつながら海外メディアの年間ベストに軒並みランクインしているのが、アイリッシュ・フォークを現代的にリビルドする孤高のバンド、ランカム。エキセントリックかつ寂寥感に満ちたアルバムを2作も発表した謎多き新鋭バンド、バー・イタリアも気になる存在だ。



 USインディー・ロックに目を向けると、テイラー・スウィフト、フィービー・ブリジャーズ(ボーイジーニアス)、スフィアン・スティーヴンスという2023年の主役たちが集結したザ・ナショナルの最新作は、ベテランらしい深みが感じられる逸品だった。ほかにもヨ・ラ・テンゴ、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ、アニマル・コレクティヴといった百戦錬磨のバンドが意欲作をリリース。若手ではウォーター・フロム・ユア・アイズの突き抜けた実験精神、キュートでクレイジーな遊び心が印象に残った。



 ウクライナに続いて中東でも戦火が広がり、悲しいニュースばかり飛び込んできた2023年。「私の背中はあなたが渡るための橋」というタイトルを掲げたアノーニ&ザ・ジョンソンズのソウルフルな歌声は、困難な時代におけるささやかな希望だった。個人的な話をさせてもらうと、ルシンダ・チュアの幽玄なるアンビエント、ブルーノ・メジャーの親密なポップソングも同じような感覚で愛聴した。音楽は社会の写し鏡であり、一服の清涼剤であり、心の拠り所でもある。自分を見失いそうになったとき、音楽はそっと手を差し伸べてくれる。綺麗事を言うようだが、そのかけがえのなさに何度救われたことか。2024年もまた素晴らしい音楽に出会えることを願って。

小熊俊哉
:@lovesydbarrett

Album of the Year

Album of the Year

Lankum
False Lankum

#1 / Loud and Quiet
#1 / The Quietus
#1 / Uncut
#2 / musicOMH
#2 / OOR
#2 / The Independent
#3 / MOJO
#3 / ミュージックマガジン ワールド・ミュージック
#4 / ele-king

Yaeji
With a Hammer

#4 / Dazed
#8 / Still Listening
#15 / Pitchfork
#17 / MondoSonoro
#19 / The Line of Best Fit
#22 / Stereogum
#24 / NME

Kelela
Raven

#1 / Beats Per Minute
#2 / Dazed
#3 / Bleep
#4 / The Forty-Five
#7 / The Skinny
#7 / Vulture
#15 / Billboard
#17/ Pitchfork
Best Albums of 2023 / GQ [UK]

Sleaford Mods
UK GRIM

#16 / Record Collector
#26 / Rough Trade UK
#32 / ele-king
#34 / Louder Than War
#34 / musicOMH
#35 / Loud and Quiet
#37 / MOJO
#45 / The Quietus

Squid
O Monolith

#11 / Still Listening
#16 / Les Inrocks
#18 / DIY
#18 / MondoSonoro
#18 / Piccadilly Records
#19 / Loud and Quiet
#21 / ele-king
#49 / rockin'on

Queens of the Stone Age
In Times New Roman...
 

#9 / OOR
#12 / Louder Than War
#12 / NME
#14 / Revolver
#20 / A.V. Club
#28 / rockin'on
#37 / Rough Trade UK
#40 / Kerrang!
#40 / MondoSonoro

Anohni and the Johnsons
My Back Was A Bridge For You To Cross

#1 / The New Yorker: Amanda Petrusich
#2 / ミュージックマガジン ロック [US/CA]
#4 / Beats Per Minute
#5 / MondoSonoro
#8 / Crack Magazine
#9 / Pitchfork
#23 / ele-king総合チャート
#50 / rockin'on
Best Albums of 2023 / GQ [UK]

Jungle
Volcano

#1 / Esquire
#7 / KCRW
#10 / PopMatters
#12 / MondoSonoro
#16 / Piccadilly Records
#24 / Time Out
#47 / Rough Trade UK
#82 / Rolling Stone

Oneohtrix Point Never
Again

#3 / The New Yorker: Amanda Petrusich
#4 / Les Inrocks
#5 / Bleep
#11 / ele-king
#20 / rockin'on
#25 / FLOOD
#34 / Gorilla vs. Bear
#58 / Piccadilly Records

Animal Collective
Isn’t It Now?

#17 / Beats Per Minute
#25 / Les Inrocks
#33 / The Wire
#47 / MOJO
#60 / PopMatters
#70 / Uncut

yeule
softscars

#3 / Dazed
#3 / ele-king [Indie Rock]
#10 / Pitchfork
#14 / FLOOD
#16 / Consequence
#17 / rockin'on
#23 / Still Listening
#24 / The Ringer
#27 / Stereogum

King Krule
Space Heavy

#14 / Northern Transmissions
#22 / Clash
#29 / Gorilla vs. Bear
#37 / PopMatters
#37 / Slant Magazine
#53 / MOJO
#67 / Rough Trade UK
#70 / Piccadilly Records

The National
First Two Pages of Frankenstein

#7 / MAGNET
#8 / OOR
#8 / Uncut
#12 / The New Yorker: Amanda Petrusich
#37 / Northern Transmissions
#48 / rockin'on
#84 / Rolling Stone

Yves Tumor
Praise A Lord Who Chews But Which Does Not Consume; (Or Simply, Hot Between Worlds)

#1 / Consequence
#4 / Vulture
#8 / Loud and Quiet
#10 / Far Out Magazine
#12 / The FADER
#15 / rockin'on

Overmono
Good Lies

#1 / ele-king [Techno]
#7 / Bleep
#8 / KCRW
#9 / Rough Trade UK
#10 / ミュージックマガジン エレクトロニック・ミュージック
#10 / Double J
#10 / Piccadilly Records
#20 / ele-king
#20 / Dazed

Yo La Tengo
This Stupid World

#1 / The Wire
#5 / Uncut
#10 / ミュージックマガジン ロックチャート [US/CA]
#12 / Far Out Magazine
#13 / Beats Per Minute
#21 / Louder Than War
#25 / MOJO
#26 / musicOMH
#38 / Pitchfork

Loraine James
Gentle Confrontation

#7 / ele-king
#8 / Clash
#13 / PopMatters
#25 / NME
#26 / Exclaim!
#36 / Treble
Albums of the Year 2023 / BBC Radio 6 Music
Best Albums of 2023 / Fopp

Romy
Mid Air

#4 / ミュージックマガジン ロックチャート [UK/AU]
#4 / MondoSonoro
#7 / musicOMH
#11 / OOR
#13 / NME
#19 / Double J
#20 / DIY
#24 / Rough Trade UK
Best Albums of 2023 / NPR

Sofia Kourtesis
Madres

#4 / ele-king [House]
#6 / The Ringer
#7 / NME
#9 / Gorilla vs. Bear
#10 / Paste
#12 / PopMatters
#16 / Time Out
#17 / musicOMH
#24 / Pitchfork

Sampha
Lahai

#1 / Clash
#1 / Vulture
#6 / ミュージックマガジン R&B/ソウル/ブルース
#7 / Northern Transmissions
#8 / Double J
#9 / The Ringer
#12 / KCRW
#18 / The Skinny
#38 / rockin'on

bar italia
Tracey Denim

#3 / Piccadilly Records
#8 / Northern Transmissions
#10 / Les Inrocks
#13 / ele-king
#17 / Gorilla vs. Bear
#24 / Still Listening
#28 / Loud and Quiet

Young Fathers
Heavy Heavy

#1 / The Skinny
#3 / musicOMH
#3 / NME
#3 / The Line of Best Fit
#4 / DIY
#4 / FLOOD
#5 / Clash
#5 / Loud and Quiet
#5 / MOJO

Louis Cole
Quality Over Opinion

グラミー賞
[Best Alternative Jazz Album] 部門
ノミネート



Events of The Year

BRIAN ENO / 史上初のソロライブ・コンサート・シリーズ『Ships』

イーノによる史上初のソロライブ・コンサート・シリーズ 『Ships』。ヴェネツィア・ビエンナーレで特別功労賞を受賞したイーノが、同ビエンナーレ音楽部門向けのプログラム制作を依頼されたことをきっかけに実現。

Wet Leg Japan Tour 2023

グラミー賞2部門&ブリット・アワード2部門を受賞直後という絶好のタイミングで来日!日本でも地上波のテレビ出演を果たすなど話題を振りまき、もちろん全公演SOLD OUT。スターダム街道まっしぐらの彼らが待望の初来日ツアーを大成功させた。


Kassa Overall Japan Tour 2023

繊細かつ豪胆に新しい時代を切り開いていく野心とビジョンが爆発!長谷川白紙がサポートアクトを務めたカッサ・オーバーオール東京公演では、圧巻のパフォーマンスで会場が熱気に包まれた。

Black Country, New Road Japan Tour 2023

フジロックの感動的ステージ以来の2度目の来日は初のヘッドライン・ツアー。爆発的なエモーションとメンバー個々の才能と個性に感嘆の連続!楽曲の完成度、演奏の成熟度、さらにとどまることがないクリエイティビティにより完成された最高のパフォーマンスを披露!


black midi Japan Tour

コロナ禍での延期を経て、破格の進化とともに帰還し、会場を沸かせた22年12月の来日ツアー。1晩で2回という怒涛のスケジュールで東京、大阪、名古屋の全公演がSOLD OUT!

ADRIAN SHERWOOD presents DUB SESSIONS 2023 featuring AFRICAN HEAD CHARGE & GEZAN

ダブの真髄を伝える濃厚ダブ体験。〈On-U Sound〉主宰のエイドリアン・シャーウッド、パーカッションの魔術師、ボンジョ率いるアフリカン・ヘッド・チャージ、そして日本からはGEZANが集結した伝説の一夜『DUB SESSIONS 2023』


BONOBO (DJ SET) JAPAN 2023

フロア前方に降臨したBONOBOを取り囲むようにオーディエンスが2時間30分踊り続けた夜。最後は「Sepien」の、スピード感のなかにどこか静けさを伴うムードでこの夜を締めくくった。

Arctic Monkeys - The Car Tokyo Pop Up Store

アークティック・モンキーズの来日に合わせたPOP-UP STOREが渋谷パルコ地下クアトロラボに出現!ここでしか買えないスペシャルなグッズに朝から多くのファンが殺到し大行列!!


Aphex Twin at Field Day 2023 (NTS 360 video)

エイフェックスがField Day 2023で披露した最新ライブセットの360度映像がYouTubeで公開中!ヘッドフォン装着で空間オーディオも楽しめる!

ON-U SOUND GALLERY & POP-UP STORE

『DUB SESSIONS 2023』の開催に合わせて20日間に渡り開催された〈On-U Sound〉Gallery & Pop-up Store!秘蔵品の展示やレアグッズを求めてDUBファンが大集合!



Rookies of The Year

Evian Christ
Revanchist

カニエ・ウエスト、トラヴィス・スコット、ダニー・ブラウンといったトップ・アーティストも認める逸材、エヴィアン・クライスト。待望のデビュー・アルバム『Revanchist』がついに2023年〈Warp〉よりリリースされた。

Slauson Malone 1
Excelsior

〈Warp〉よりアルバム『Excelsior』をリリースしたスローソン・マローン1は天才と形容せざるを得ない。パーソナルで魅惑的な作品として仕上がっている今作は、そのタイトルの通り彼が今後永久に上昇し続けることの布石となっている。

Lucinda Chua
YIAN

FKAツイッグスからザ・シネマティック・オーケストラまで魅了する美しき孤高の才能、ルシンダ・チュア。1stアルバム『YIAN』は静謐で時に妖艶な心地のいい唯一無二の世界観が見事に構築された2023年を代表する一枚。

bar italia
The Twits

ロンドン2.0。ディーン・ブラント主宰〈World Music〉からのリリース作で一際注目を集めていたバー・イタリアは、今最もエキサイティングな新人の一つであり、今年リリースした2枚のアルバムはいずれも未来永劫語り継がれる大傑作。

Barry Can’t Swim
When Will We Land?

今UKで最も注目されている新鋭プロデューサー、バリー・キャント・スウィムが〈Ninja Tune〉からリリースしたデビュー・アルバム『When Will We Land ?』は間違いなく2023年を象徴する作品!

Fat Dog
King of the Slugs

そのパワフルでハイテンションなライヴ・パフォーマンスが噂を呼んでいるファット・ドッグ。バイアグラ・ボーイズ、シェイム、ヤード・アクトらに続く期待の新人が〈Domino〉から衝撃デビュー!


Overmono
Good Lies

今夏フジロックにも出演したUKダンス・シーンの真打、オーヴァーモノ。マルチ・ジャンルな魅力を放つ強力なシングル群を携えた待望のデビュー・アルバム『Good Lies』は、ダンス・フロアを飛び出し全世界で絶賛された!

Sofia Kourtesis
Madres

海外メディアもこぞって大絶賛するプロデューサー/DJのソフィア・クルテシスによるデビューアルバム『Madres』はラテンの心とドイツ製のモーターを併せ持つ、活動家による光と愛にあふれた渾身の一枚!



Goods of The Year



フジロックのホワイトステージのトリで会場を沸かせたルイス・コールのステージにポニーが登場!ライブ終演後にGAN-BANブースで販売され即完売!!




今年2枚リリースをしたザ・ナショナル。『First Two Pages of Frankenstein』収録曲「New Order T-Shirt」の曲名通りのTシャツを発売!ニュー・オーダーからのお墨付きもしっかりもらってます!

Little Simz "Gorilla"
Dir. Dave Meyers

The Smile "Wall Of Eyes"
Dir. Paul Thomas Anderson

Jungle "Back On 74"
Dir. J Lloyd & Charlie Di Placido

Oneohtrix Point Never "A Barely Lit Path"
Dir. Freeka Tet

Young Fathers "Tell Somebody"
Dir. David Uzochukwu

Sampha "Time Travels Memories"
Dir. Sampha & Caleb Femi

長谷川白紙 "口の花火"
Dir. 釣部東京

Kelela "Contact"
Dir. Neva Wireko

Yves Tumor "Echolalia"
Dir. Jordan Hemingway

Georgia "It's Euphoric"
Dir. FA&FON

Róisín Murphy "Fader"
Dir. Róisín Murphy

yeule "dazies"
Dir. Zhang + Knight

Romy "Enjoy Your Life"
Dir. Vic Lentaigne

The Kills "103"
Dir. Steven Sebring



hiwatt ライター
音楽メディアTURNを中心に執筆活動を行なう。
@kalopsia___3

James Ellis Ford
『The Hum』
〈Warp〉
Alan Braxe
『The Upper Cuts (Reissue)』
〈Smugglers Way〉
Nightmares On Wax
『Club E.A.S.E.』
〈Warp〉


パンデミックが落ち着き、クラブ・ミュージックへの渇望が解き放たれ、様々なビートのリバイバルが音楽界を席巻しているが、Nightmares On Waxが『CLUB E.A.S.E.』と銘打った、燻銀で蠱惑的なハウス・ミュージックの虜になった。
そんな活況の中、フレンチ・タッチの再興も匂っており、パイオニアの1人であるAlan Braxeが、Daft Punk不在の中で急先鋒となっている。今年リイシューされた彼の名盤『The Upper Cuts』は、今一度聴き返すべきだ。 また、SMD再評価のムードもあるが、James Ellis Fordの1stソロ『The Hum』が素晴らしい。彼が長きに亘り手がけるArctic Monkeysの直近2作と、SMDでのキャリアが邂逅した作品であった。


hashimotosan
ジャンルや国、時代を問わず様々なミュージシャンを愛する音楽マニア。
ファッション誌SPURで「hashimotosanの“雑食”音楽紀行」を連載中。
@hashimotosan122

Kelela
『Raven』
〈Warp〉
Sofia Kourtesis
『Madres』
〈Ninja Tune〉
Sampha
『Lahai』
〈Young〉


2023年は前年にBeyoncéが「RENAISSANCE」をリリースし、多くのミュージシャンに大きな刺激を与えた事が如実に現れた1年だったように思う。世界中で蓄積していた「踊りたい!」という人間の本能的な欲求を、多種多様なサウンドやカルチャーを巻き込み解放させた事で、それに呼応するように様々な地域から面白いアプローチのダンスミュージックが続々と登場したのが印象的だった。
ロンドンやベルリンのクラブシーンへのリスペクトをクールなR&BサウンドとブレンドさせたKelelaや、出身地である南米・ペルー由来の祝祭感のあるトライバルなビートがスタイリッシュなSofia Kourtesisの新作アルバムはそんな今年の流れを象徴するような傑作。ドラムンベースを生ドラムの肉感的な響きとリズムで再解釈したようなSamphaの「Lahai」は、クラブミュージックの新たな可能性を提示した1枚と言えるだろう


JunFukunaga ライター/インタビュワー
音楽、映画を中心にフードや生活雑貨まで幅広く執筆する雑食性フリーランスライター・インタビュワー。最近はテクノロジーとクリエイティブの関係性を探る執筆が多め。
@LadyCitizen69
@fkalc_junfukunaga
note:JunFukunaga

salute
『Shield』
〈Ninja Tune〉
Supershy
『Happy Music』
〈Beyond The Groove〉
Braxe + Falcon
『Step By Step Remixes』
〈Smugglers Way〉


今年はY2Kリバイバルが本格化し、ダンスミュージック界隈でもY2Kバイヴスを踏襲した楽曲が数多くリリースされた印象があります。その中でもsaluteの「Wait For It」は、あの頃"パーティーすぎる"と揶揄されることもあった"チャラい"(良い意味で)UKガラージの息遣いを現代に甦らせたかのような曲で特に胸に刺さりました。
また、SuppershyやBraxe + Falconのリミックス盤でのA-Trakによる直球のフレンチハウスへのアプローチも"あの頃"感が強く伝わってきて印象に残りました。こういったY2Kリバイバル曲が存在感を放つ一方でにわかに次の時代"00年代"を思わせる曲も登場している昨今。この潮流が来年どのタイミングで本格化するのか今から楽しみでなりません。


ピーター・バラカン ブロードキャスター
@pbarakan

Cat Power
『Cat Power Sings Dylan: The 1966 Royal Albert Hall Concert』
「Just Like A Woman」
〈Domino〉
Tinariwen
『Amatssou』
「Tenere Den」
〈Wedge〉
African Head Charge
『A Trip To Bolgatanga』
「A Trip To Bolgatanga」
〈On-U Sound〉


キャット・パワーのディランは予想をはるかに超える傑作です。あの伝説の1966年「アルバート・ホール」のコンサートを完全に再演する形で、前半はアクースティック、後半はバンド編成、選曲も曲順も同じですが、ディランの最も馴染みの深いレパートリーを工夫もせずに歌っているにもかかわらず、彼女の解釈の力でこの音楽が新たに生まれ変わっています。
4年ぶりのティナリウェンは数曲でアメリカのミュージシャンが参加し、アルジェリアの砂漠で録音されたものをダニエル・ラノアがアメリカでプロデュースしたことが話題になりましたが、この人たちの音楽はそう簡単に変わるものではなく、相変わらず聞いているとラクダに乗っている錯覚に陥ります。この原稿を書いている直後に控えている来日公演が楽しみです。


つやちゃん 文筆家/ライター
音楽を中心に様々な分野についての表現、執筆、トーク。著書に『わたしはラップをやることに決めた フィメールラッパー批評原論』(DU BOOKS)など。
@shadow0918

Christine and the Queens
『Paranoia, Angels, True Love』
〈Vmlas〉
yeule
『softscars』
〈Ninja Tune〉
Yves Tumor
『Praise A Lord Who Chews But Which Does Not Consume; (Or Simply, Hot Between Worlds)』
〈Warp Records〉


リバイバルも行くところまで行き着いたことでいよいよ時空は歪みはじめ、現在と過去が融解し、「いい曲」は単にそれとしてその他無限の「いい曲」とともに記憶の彼方へ霧散していく。だからこそ、もはや「いい曲」を世に繋ぎとめるものは作者のアイデンティティしかない。トロイ・シヴァンの“Rush”や“Got Me Started”がアンセムとなった今年、身体の快楽と違和をそのままの武骨な形ではなく、結晶化させ完成度高く打ち立てる傾向が多く見られたように思う。近年の実験が蓄積され、成果をあらわしてきたということか。たとえばレーベルやレコード会社は、それら試みの結実をマテリアルとして世に放つ。自我が社会との緊張関係によって作品となり、さらにモノとして流通するという稀有なこと。その意味性はますます変容しているように思う。


s.h.i (和田信一郎) ライター
医療職、音楽関係の文筆。『現代メタルガイドブック』監修・執筆。直近では『ユリイカ2023年12月号 特集=長谷川白紙』でインタビューと論考を担当。
@meshupecialshi1
Hatena Blog:『Closed Eye Visuals』

Body Void
『Atrocity Machine』
〈Prosthetic Records〉
Genevieve Artadi
『Forever Forever』
〈Brainfeeder〉
Sampha
『Lahai』
〈Young〉


個人的な興味の範疇で言えば、地下メタル周辺の音響革新が特に印象に残った年でした。Model/Actriz『Dogsbody』のプロデュースも担当したSeth Manchesterはキーパーソンで、そのSethが密に関わったSightless Pit『Lockstep Bloodwar』(claire rousayも客演)はシーンの越境的な繋がりを一望できてお薦め。Body Voidの新譜はそうした流れの最先端で、芸術的な激重ノイズ音響を堪能できる逸品です。
それとはまた別に、ジャズ影響下の高度なポップスも印象的でした。KNOWERの一員として知られるGenevieve ArtadiはLouis Coleに勝るとも劣らない才能の持ち主。Samphaの新譜も聴きやすさと奥深さの両立が素晴らしかったです。


よろすず ライター/音楽家
長崎県在住。よろすず名義で音楽に関しての執筆、Shuta Hiraki名義で音楽制作やライブを行う。
@yorosz
@yorosz
Shuta Hiraki

Sarah Davachi
『Long Gradus』
〈Late Music〉
Sarah Davachi
『Selected Works I & II』
〈Late Music〉
Kali Malone, Stephen O’malley, Lucy Railton
『Does Spring Hide Its Joy』
〈Ideologic Organ〉


2023年、実験的なアンビエントやドローン・ミュージックにおいては、数時間におよぶ収録時間を持つ大作の存在が印象的でした。Sarah Davachiが発表した『Long Gradus』の4時間越えとなる豪華盤4CD、Kali Maloneによる3時間に及ぶ作曲作品『Does Spring Hide Its Joy』を筆頭に、Kenneth Kirschner『July 27, 2022』、Émile Zener『Contraluz』も、それぞれに時間や持続への深い洞察が滲む素晴らしい作品。サブスクリプションの全盛か、それともLPレコードの復権によるものか、収録時間30~40分程度のコンパクトなアルバムが目立つ昨今ですが、その陰でこのような作品たちが生まれていることもまた興味深いです。


もこみ ライター/ジャーナリスト/DJ
神奈川県出身・在住の大学院生。在学時より文筆活動を開始。関心領域は国内外のポップミュージック全般。2022年よりポッドキャスト番組「脱字コミュニケーション」を運営。1999年生まれ。
@mocomi__

Sofia Kourtesis
『Madres』
「Cecilia」
〈Ninja Tune〉
Georgia
『Euphoric』
「Live Like We're Dancing (Part Ⅱ)」
〈Domino〉
Cruyff
『lovefullstudentnerdthings』
「xbox360」
〈POWERPUFF〉


2023年は世界的には最悪ですが、個人的には総じて楽しいことが非常に多かった1年でした。熱心に最新の音楽を聴くようになったのがパンデミックに見舞われる2020年だった自分にとって、「来日公演」は未知の領域でした。しかし、特に今年は初めてフェスに行ったり頻繁にライブに行ったりと、ライブ通いが日常になりました。特にbeatinkのアーティスト関連のイベントや作品には非常にお世話になった一年でした。人生初のインタビューやこれまで馴染みのなかったアーティストのライブレポートを通じて勉強させてもらいました。感謝の気持ちでいっぱいです。
好きな作品は選びきれませんが、パンデミック直前に出会った「Live Like We're Dancing」の再録を含むGeorgiaの新作は特に感動的でした。


おすすめ音楽紹介
@E6jLy

The National
『First Two Pages of Frankenstein』
〈4AD〉
ANOHNI and the Johnsons
『My Back Was a Bridge for You to Cross』
〈Rough Trade〉
Sufjan Stevens
『Javelin』
〈Asthmatic Kitty Records〉


2023年のUSインディ・シーンは次代へと種が蒔かれた1年として深く印象に残りました、世界的なパンデミックの終息ムードを皮切りにWednesdayを始めfeeble little horseやHotline TNTと言った次世代を担う若きバンドやSSWの台頭は目覚ましく、中でもboygeniusの3人がメインストリームでの成功を手にしたのは特筆すべき点でした、それと並行してデビューから20年を超えるベテラン達も自らの歩みを止めず円熟した傑作をリリースした事実も見逃せません、毎月の様にライブやアルバムの評判で各メディアが賑わいシーンが活気付いていたのは久しぶりの感覚で素直に嬉しかったですね、こうした盛り上がりの中迎える2024年の音楽に早くも期待が高まります。


河村祐介 OTOTOY編集長/ライターなど
@Futoru_

African Head Charge
『A Trip To Bolgatanga』
〈On-U Sound〉
Holy Tongue
『Deliverance And Spiritual Warfare』
〈Amidah〉
ANOHNI and the Johnsons
『My Back Was a Bridge for You to Cross』
〈Rough Trade〉


今年はアフリカン・ヘッド・チャージ新作リリース記念ということで、〈ON-U〉の販促用冊子を作らせていただき、紙媒体編集の楽しさを15年ぶりぐらいに思い出してみたり、そして来日公演、まさに轟音、いや剛音のエイドリアン・シャーウッド、生ダブ・ミックスをズブズブに浴びてみたり。加えてのクリエイション・レベル新作、そしてソニック・ブーム&パンダ・ベアのダブ盤などなど、エイドリアン・シャーウッドの活発な動きとともに、こちらにあげたアル・ウートンのダブ・バンド・プロジェクトなど、ベース・ミュージック以降の世代の傘下も含めて、新たにUKのダブが個人的にビビッドな1年になりました。


吸い雲 ブロガー
音楽を聴いて文章を書いています。『TURN』にて定期的にレビューを執筆
@maruomarukido
Hatena Blog:『吸い雲レコード』

Slauson Malone 1
『Excelsior』
〈Warp〉
Liv.e
『Girl In The Half Pearl』
〈In Real Life〉
Loraine James
『Gentle Confrontation』
〈Hyperdub〉


10月に公開されたインタビュー記事で、Slauson Malone 1ことJasper Marsalisが自分のライヴについて「パフォーマンス・アートに近いというか。僕がいちばん気に入っているのは、それをポップ・ミュージックの文脈のなかでやれるということ」と語っていたのが印象に残っています。やや原文の文脈からずれるのですが、前衛的なものや奇妙なものなど、本来unpopularなものを包み込む「ポップ・ミュージック」という器の大きさについて改めて考えました。ここに挙げた作品はそのSlauson Malone 1を筆頭に、様々なジャンルのサウンド、複雑なリズムなどを、あくまで肉感的でコンパクトなトラックにまとめているところに共通点がある気がします。ポップ・ミュージックのもつ、こうした両義性のようなものに惹かれ続けています。


小野島 大 音楽評論家
@dai_onojima
note:小野島 大

Sofia Kourtesis
『Madres』
〈Ninja Tune〉
Lee Gamble
『Models』
〈Hyperdub〉
WheelUp
『We are the Magic』
〈Tru Thoughts〉


ビートインクものから選出。他誌で選んだものは除外し、ほかの人が選びそうなものも外した。今年は豊作だったと思います。個人的にはオーディオシステムを一新して、これまで以上に音楽を楽しめた1年だった。


岡村詩野 music writer.
音楽についての文章を書いてます。TURN(@TURNTOKYO)編集長。
京都精華大学、昭和音楽大学非常勤講師、α-STATION月曜午前10時『Imaginary Line』(@fmkyoto_ImLine) など。インスタもやってます。
@shino_okamura
@shino_okamura

ANOHNI and the Johnsons
『My Back Was a Bridge for You to Cross』
〈Rough Trade〉
Animal Collective
『Isn't It Now?』
〈Domino〉

Yo La Tengo
『This Stupid World』
〈Matador〉



ディスクユニオン新宿オルタナ館で動画撮影をおこなったヨ・ラ・テンゴ以下、今年も『TURN』では実に多くのアーティストに取材でお世話になり、アニマル・コレクティヴに関しては冊子まで制作させていただきました。その中でも圧倒的に繰り返し聴いたのはアノーニです。終わらないロシアのウクライナ侵略、イスラエルによるガザ地区への攻撃など地球上からいっこうに戦争がなくならない中、素晴らしいソウル・ミュージック・アーティストであることを伝えてくれたアノーニのこの作品が、平和への橋渡しとなるべく2023年の世界のあちこちで聴かれていたことをとても尊く思います。


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\ 2024年もどうぞよろしくお願いします!/