photo by Kazumichi Kokei
*以下、ネタバレを含みますので、ご注意ください。
年間ベストとも名高い、5月に発表された最新作『caroline 2』を引っさげての待望の初来日公演が遂に実現した。チケットは完売、満員のフロアでアンビエント調の落ち着いたSEの中開演を待った。
サポートアクトの松丸契はサックスを携え1人で登場。事前録音やエフェクターを駆使し30分にも及ぶ絶え間ないサウンドスケープを披露。サックスソロという編成の限界を感じない独創的な演奏だった。
ほどなくしてcarolineの8人が登場した。演奏中の合図を交わすのに適した、半円型に広がる独特の陣形が印象的。服装がスーツやTシャツ、短パンなど多様な点も目を引いた。アレックス・マッケンジーのサックスによる重低音が鳴り響く中、ジャスパー・ルウェリンがステージ中央に赴き、意味深に置かれたスネアをアンプに近づけ、サックスと呼応した振動音を増幅させる斬新な手法から「Song two」になだれ込む。メンバー同士向かい合うことが可能にした息のあった演奏で素晴らしい幕開けだった。
くぐもったクラブミュージックのような低音から始まる「When I get home」は、セットリストの中で最も落ち着いた曲調。ジャスパーとヴァイオリンのマグダレーナ・マクリーンによるボーカルに、不揃いながら統一感も感じる各々のサウンドを重ねていく。
ジャスパーが「来てくれてありがとう、carolineです」と日本語で挨拶した後、「U R UR ONLY ACHING」が始まった。途中デモ音源が差し込まれる複雑な楽曲だが、音源のように完璧なタイミングで曲調を切り替える高難度の演奏をサラッとこなす。バンドの一体感を強く感じた瞬間だ。曲の終盤にはギターのマイク・オマリーとベースのフレディ・ワーズワースが体を折り重ねながら見事なコンビネーションを披露した。
続く「Two riders down」はジャスパーとドラムのヒュー・エインスリー、ヴァイオリンのオリヴァー・ハミルトンの3人によるコンパクトな編成で始まる。1stアルバム発表後亡くなったバンド近親者2人について歌ったこの曲は、彼らにとって特別なようで、ジャスパーは目に涙を浮かべ演奏していた。
キャスパー・ヒューズによる印象的なイントロに歓声が上がった「Dark Blue」はデビュー・アルバムから。クラウトロックの影響も思わせるギターの反復に、徐々にメンバーが加わり熱を帯びる。初期からの楽曲なだけあって盤石のアンサンブルを聴かせる。
キャロライン・ポラチェックの客演が話題となった「Tell me I never knew that」では、彼女に代わりマグダレーナがボーカルを担当。ボーカルとしての彼女の魅力を存分に味わえた。ここでジャスパーがベースを担当していたように、曲ごとにメンバーそれぞれ様々な楽器を使い分ける点も印象的だった。
『caroline 2』のラストを飾る「Beautiful ending」ではジャスパーがボイスチェンジャーを多用していた。単なる飛び道具ではなく、楽曲の雰囲気作りにおいて重要な役割を果たしている。アレックス、フレディ両名による管楽器の響きには荘厳さをも感じた。
「Coldplay cover」演奏前にはジャスパーによる説明が挿入。マネージャー宅のリビングとキッチンでメンバーが半々に分かれ、マイクを移動させ録音した手法をステージ上で再現する興味深い試みだった。『caroline 2』のテーマの一つである「同時多発的状態」を視覚的に実感できた。
1stアルバムからの「Good morning(red)」では、牧歌的な曲調と朝日が差し込むような照明に朝の希望を感じつつ、4本のギター、3人のボーカルがせめぎ合う様に圧倒される。“Can I be happy in this world”と力の限り歌うキャスパーのボーカルに胸を打たれた。
ライブの締めくくりは新たな代表曲「Total euphoria」。一度聴いたら忘れられないギターの音色に、この日一番の歓声が上がる。終盤、1曲目でも使われたステージ中央のアンプに近づいたオリヴァーの荒々しいヴァイオリンを合図に、8人の轟音が観客めがけ一気に押し寄せる。暴力的なまでに力強いサウンドで心身ともに震えた。
最後は8人横一列ステージ中央に並び深々とお辞儀をして、観客の拍手が鳴り止まない中carolineのステージは幕を閉じた。
アンコール無し全10曲という潔さも感じるセットリストだが、現時点でのバンドの集大成をこれでもかと見せつける大満足の1時間10分だった。8人が真摯に向き合う姿が目に焼きついている。彼らがいまだ2枚しかアルバムを出していないと思うと末恐ろしい。早くも次の来日が待ち遠しくなる、そんなライブだった。
船本泰生
*以下、ネタバレを含みますので、ご注意ください。
年間ベストとも名高い、5月に発表された最新作『caroline 2』を引っさげての待望の初来日公演が遂に実現した。チケットは完売、満員のフロアでアンビエント調の落ち着いたSEの中開演を待った。
サポートアクトの松丸契はサックスを携え1人で登場。事前録音やエフェクターを駆使し30分にも及ぶ絶え間ないサウンドスケープを披露。サックスソロという編成の限界を感じない独創的な演奏だった。
ほどなくしてcarolineの8人が登場した。演奏中の合図を交わすのに適した、半円型に広がる独特の陣形が印象的。服装がスーツやTシャツ、短パンなど多様な点も目を引いた。アレックス・マッケンジーのサックスによる重低音が鳴り響く中、ジャスパー・ルウェリンがステージ中央に赴き、意味深に置かれたスネアをアンプに近づけ、サックスと呼応した振動音を増幅させる斬新な手法から「Song two」になだれ込む。メンバー同士向かい合うことが可能にした息のあった演奏で素晴らしい幕開けだった。
くぐもったクラブミュージックのような低音から始まる「When I get home」は、セットリストの中で最も落ち着いた曲調。ジャスパーとヴァイオリンのマグダレーナ・マクリーンによるボーカルに、不揃いながら統一感も感じる各々のサウンドを重ねていく。
ジャスパーが「来てくれてありがとう、carolineです」と日本語で挨拶した後、「U R UR ONLY ACHING」が始まった。途中デモ音源が差し込まれる複雑な楽曲だが、音源のように完璧なタイミングで曲調を切り替える高難度の演奏をサラッとこなす。バンドの一体感を強く感じた瞬間だ。曲の終盤にはギターのマイク・オマリーとベースのフレディ・ワーズワースが体を折り重ねながら見事なコンビネーションを披露した。
続く「Two riders down」はジャスパーとドラムのヒュー・エインスリー、ヴァイオリンのオリヴァー・ハミルトンの3人によるコンパクトな編成で始まる。1stアルバム発表後亡くなったバンド近親者2人について歌ったこの曲は、彼らにとって特別なようで、ジャスパーは目に涙を浮かべ演奏していた。
キャスパー・ヒューズによる印象的なイントロに歓声が上がった「Dark Blue」はデビュー・アルバムから。クラウトロックの影響も思わせるギターの反復に、徐々にメンバーが加わり熱を帯びる。初期からの楽曲なだけあって盤石のアンサンブルを聴かせる。
キャロライン・ポラチェックの客演が話題となった「Tell me I never knew that」では、彼女に代わりマグダレーナがボーカルを担当。ボーカルとしての彼女の魅力を存分に味わえた。ここでジャスパーがベースを担当していたように、曲ごとにメンバーそれぞれ様々な楽器を使い分ける点も印象的だった。
『caroline 2』のラストを飾る「Beautiful ending」ではジャスパーがボイスチェンジャーを多用していた。単なる飛び道具ではなく、楽曲の雰囲気作りにおいて重要な役割を果たしている。アレックス、フレディ両名による管楽器の響きには荘厳さをも感じた。
「Coldplay cover」演奏前にはジャスパーによる説明が挿入。マネージャー宅のリビングとキッチンでメンバーが半々に分かれ、マイクを移動させ録音した手法をステージ上で再現する興味深い試みだった。『caroline 2』のテーマの一つである「同時多発的状態」を視覚的に実感できた。
1stアルバムからの「Good morning(red)」では、牧歌的な曲調と朝日が差し込むような照明に朝の希望を感じつつ、4本のギター、3人のボーカルがせめぎ合う様に圧倒される。“Can I be happy in this world”と力の限り歌うキャスパーのボーカルに胸を打たれた。
ライブの締めくくりは新たな代表曲「Total euphoria」。一度聴いたら忘れられないギターの音色に、この日一番の歓声が上がる。終盤、1曲目でも使われたステージ中央のアンプに近づいたオリヴァーの荒々しいヴァイオリンを合図に、8人の轟音が観客めがけ一気に押し寄せる。暴力的なまでに力強いサウンドで心身ともに震えた。
最後は8人横一列ステージ中央に並び深々とお辞儀をして、観客の拍手が鳴り止まない中carolineのステージは幕を閉じた。
アンコール無し全10曲という潔さも感じるセットリストだが、現時点でのバンドの集大成をこれでもかと見せつける大満足の1時間10分だった。8人が真摯に向き合う姿が目に焼きついている。彼らがいまだ2枚しかアルバムを出していないと思うと末恐ろしい。早くも次の来日が待ち遠しくなる、そんなライブだった。
船本泰生