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Daniel Rossen / 自身初となるソロアルバム『You Belong There』を携えてのロンドンでの最新ライブレポートが到着!

2022.05.24

Daniel Rossen / 自身初となるソロアルバム『You Belong There』を携えてのロンドンでの最新ライブレポートが到着!

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Daniel Rossen / 自身初となるソロアルバム『You Belong There』を携えてのロンドンでの最新ライブレポートが到着!

先日5/20にロンドンUNION CHAPELにて行われた、ダニエル・ロッセンのUK公演の最速ライブレポートが到着!

Daniel Rossen@Union Chapel. London/20May2022

 現在も礼拝に使用されている教会の会場に入ると、大理石を貼った祭壇とその上方を飾る壮麗なステンド・グラスが目を引く。アコースティック・ギター3本にアップライト・ピアノ、椅子が置かれただけの簡素なステージとは対照的だが、30代以上の落ち着いた男女がメイン(大学生風もかなり混じっていたが)の観客の中には静かな熱気が漂っている。
 名門〈WARP〉発のギター・バンドとして00年代半ばに注目を浴び、サード『Veckatimest』(09)、4th『Shields』(12)が全米チャートのトップ10入りを果たしたアメリカーナ系秀才音楽集団グリズリー・ベア(ジョニー・グリーンウッドからも絶賛された)。残念ながら現在活動停止中だが、今夜はバンドの発起人エド・ドロストと作曲/リード・ヴォーカルを分担していた「静かなフロントマン」ことダニエル・ロッセンの、ソロ名義では初のアルバム『You Belong There』発表後のショウだ。「帰還」を祝うベア・ファンが微熱を帯びるのも当然の話だろう。
 〈WARP〉復帰作となった『You Belong〜』の素晴らしさもその思いを募らせる。ほぼすべての楽器――クラリネットやダブル・ベースまで習得したという――を自演した力作にして滋味に富んだメロディの数々とため息もののアレンジの美は、「ひとりグリズリー・ベア」の評価も納得。ぜひいつかフル・バンドでライヴをやって欲しいものだが、今回のアコースティック・ショウはむしろファンとの久々の再会&ソロとしての道のりのショウケースも兼ねた挨拶的な内容だった。

 『You Belong〜』のシグネチャー・サウンドである12弦ギターが1曲目〝Repeat the Pattern〟からラーガの隆起を見事に描き出す。生で聴くとストロークはザクッと生々しく、ジャック・ローズばりの迫力に圧倒される。イントロだけで喝采がわき起こったグリズリー・ベア時代の〝Easier〟に場内が少し和んだところで、1枚目のソロEP『Silent Hour/Golden Mile』(12)から〝Silent Song〟。個性的なコード感覚といいエモーショナルな歌声といいタイトルに反して音楽的に饒舌で(笑)、エピックになってしまうのは彼らしい。人間のいない空間=無からのスタートについての歌である〝Unpeopled Space〟は、冒頭につぶやかれた「Conjuring(conjure=呪文・まじない等でスピリットを呼び覚ます)」の言葉にたがわず、淀みないアルペジオの熱い響きが作り出す音の森に息を呑む。この晩最初のピアノの弾き語りだった〝Celia〟のラグタイムなノリにふとランディ・ニューマンが浮かんだが、和音使いやドラマチックな転調の数々はクラシック・ピアニストのテンションだ(弾き終えて本人も「つい興にのっちゃったけど、『僕のための時間』ってことで許して」と照れくさそうに笑っていた)。
 グリズリー・ベア以前からやっていた宅録ユニット:デパートメント・オブ・イーグルスのレパートリーから〝Phantom Others〟と〝In Ear Park〟が披露され、60年代グリニッジ・ヴィレッジ的な前者のフォーク・ブルーズ然としたストレートさと変化に富んだ曲構成&超絶な運指(筆者の隣に座っていた若者客は興奮しまくりで、携帯カメラを思いっきりダニエルの手にズームインして撮影していた)で聴かせる後者とが難なく共存。この振れ幅はタウンズ・ヴァン・ザントの〝Kathleen〟のカヴァーで音の暗雲を呼び寄せ、続く〝Golden Mile〟では一転、嵐の後に射す陽光のごとく明るいトーンを降らせた場面でも強く感じた。ギター1本と声で彼は映画を織り成している。
 粘っこいシャウトと滔々と澄んだピアノの音色が、しかし安易にジョン・レノンに陥らないバランスも見事な〝Saint Nothing〟。長いギター・イントロを経て哀願に近いヴォーカルで佳境に登り詰めた〝It’s A Passage〟――『You Belong〜』の1曲目に回帰――でフィナーレするのも大いにありだったが、感極まった観客のコールに応え、ジュディー・シルの〝Waterfall〟(09年のトリビュート盤『Canyon Angel』からのディープ・カット)のカントリー・フォークな味わいで本編終了。アンコールは可憐なメロディで揺らす〝Herringbone〟、そして(時刻も10時半を回っていたので)「おやすみの曲」として歌ってくれたアメリカの古いフォーク・ソング〝Deep Blue Sea〟の翻案(ザ・ウィーヴァーズで有名。グリズリー・ベア版はEP『Friend』収録)はマイケル・ハーリーもよもやのあたたかい子守唄。ブルックリンのクールなインディ・キッドも、もうじき40歳のお父さんになったんだな……と感じて胸が熱くなった。

 ギターをチューニングしながら「8年前にもこの会場でプレイしたことがあったっけ」と話していたが、ソロとしては初だったそのツアー以来彼の状況は大きく変化し、今回は真の意味で「独り立ち」だった。約1時間半のショウの間一度も水/ドリンクを飲まなかったのには驚いたけれど、実はそれだけ緊張していたのかもしれない。アコースティックのライヴは隠れ場所がないだけに、主役は音楽とはいえ曲間のMCや歌の背景説明等、観客とのやり取りでショウ全体の雰囲気〜流れを作るもの。しかしその面は控えめで、良い演奏と歌唱を自分の中から生み出すことに専念し、ギターとピアノの間を生真面目に往復するダニエルの姿は「この人は、自分のスタジオでもこんな風なんだろう」と感じて微笑ましかった。
 もともとシャイな人なのだろうし、観客よりも窓の外に広がる大自然――彼が現在暮らしているニュー・メキシコ州サンタ・フェを愛したジョージア・オキーフの絵のような――を相手に日夜イマジネーションをふくらませ、細かな筆致で音のランドスケープを描くのが性に合っていそうだ。だが、そんな彼の中にも強いエモーションや情動は渦巻いているし、それを「手」の楽器を介してじかに聴き手とシェアすることで生じた共感の連鎖反応はこの晩の大きなカタルシスだった。まだ彼自身にも「慣れ」が必要かもしれないが、COVIDが強いた長い孤独を経て人々がまた繫がり合い始めている今のこの時期は、逆に再出発には絶好のタイミングかもしれない。このまま、どんどん外に触れていって欲しいと思った――ロックンロール時代以前の様々な大衆音楽の心の本質と繫がり、それをモダンに翻訳できる彼の才能が希有であることは今夜改めて証明されたのだから。

Text by 坂本麻里子

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