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Future Islands / 貴重なロング・インタビュー公開!*前編

2020.10.07

Future Islands / 貴重なロング・インタビュー公開!*前編

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Future Islands / 貴重なロング・インタビュー公開!*前編

interview : Future Islands

『As Long As You Are』フューチャー・アイランズ
- 今まで敬遠していた感情と向き合って探求しようと思った。
インタビュー・テキスト : 松林弘樹

『As Long As You Are』:フューチャー・アイランズが3年ぶりにリリースする新作は、『あなたがいる限り』というタイトルがつけられた。2020年に発表する作品としては、これ以上ないメッセージ性を内包させるアルバム・タイトルだろう。

ファーストアルバム『Wave Like Home』から新作『As Long As You Are』まで、エモーショナルな演奏と心象風景の機微とを詩的に描くことを一貫してやってきたバンドが、フューチャー・アイランズだ。

8月上旬に行ったバンド・メンバー全員への公式インタビューでは、今まで求め続けてきた音楽性の変遷を明らかにしつつ、ニュー・アルバムを制作する過程でおこなったバンドの新たな挑戦についても真摯に話してくれた。

以下のインタビューは、10月9日にリリースされる『As Long As You Are』の国内盤解説では文字数の関係上、なくなく省かざるを得なかった発言をまとめたアウトテイク・バージョンだ。今まであまり語られてこなかったフューチャー・アイランズの楽曲制作の過程、積み重ねてきた音楽性を一度崩し原点へ立ち返ってみる必要性、さらに、ボーカリストで詩人でもあるサミュエルの表現の根幹に触れられるような発言の数々に、バンドの未知なる魅力を感じるかもしれない。

Future Islands メンバー :
サミュエル・T・ヘリング(Vo)
ゲリット・ウェルマーズ(Key、Prog)
ウィリアム・キャッション(B、G)
マイケル・ローリー(Dr)


-サミュエルはスウェーデンでの様子をたびたびインスタグラムにアップしていましたね。いま現在はどう過ごしているのですか?

サミュエル:俺はアルバムのミキシングを完成させるために、3月10日にスウェーデンからボルチモアに戻ってきて以来、5ヶ月間も、ここで足止めをくらっているんだ(笑)。俺の婚約者はスウェーデン人なんだけど、彼女の元にはまだ戻れていないんだよ。俺はちょうどいろいろな都市機能や場所が閉鎖されるロックダウン直前にアメリカに帰ってきたというわけさ。(このインタビューの一週間後にスウェーデンへ戻った様子がSNSへ投稿された)

- Future Islandsは一年間の大半をライブ活動で世界中を飛び廻るバンドですが、2020年を迎えてライブが制限されている現状をどう感じていますか?

メンバー全員: ブーー(親指を下げるしぐさ)!!!(笑声)

ウィリアム : 俺たちはかなりがっかりしているよ。今年はまだ終わっていないけど、俺たちがバンドを結成した2006年以来、今年が初めてライブを1回もやらない年になるかもしれない。もしかしたら秋にイベントをやるかもしれないけど、かなり残念なことだよ(配信ライブ”A Stream Of You And Me”を行うことが発表された)。ツアー活動が俺たちの主な収入源になっているからという理由もあるけど、俺たち4人はみんなツアーするのが大好きで、いろいろな土地のオーディエンスの前でライブをするということが大好きなんだ。その経験から得るものはとても大きいから。今年はそれができないのが本当に残念だよ。

- FUJI ROCK’20も延期になり、来日も不可能になってしまいましたね...。

サミュエル : 俺たちはツアーで生計を立てているからね。この現状の影響で世界中のたくさんの人が仕事を失っているけれど、俺たちもその影響をモロに受けている。特にFUJI ROCKは、ついに出演の招待を受けることができて日本にまた行くのを凄く楽しみにしていたのに、キャンセルになってしまって、、、本当に悲しかった。この世界は、以前と同じようには二度とならないかもしれないけれど、俺たちがいつまたツアー活動を再開できるのかという目処さえ立っていないという現状は、少し怖いことだね。

Future Islands - For Sure (Official Video)


- では、完成した新作『As Long As You Are』について聞かせてください。録音期間は2019年の1月から2020年の1月までと一年かけて制作されたそうですね。バンドの演奏やボーカル録りの全てをボルチモアのWrightway Studiosでおこなったのですか?

サミュエル : 基本的にはそうだね。でも、このアルバムにはどこの国で録音したのかもう覚えてないけど自分のiPhoneで録ったフィールドレコーディングがいくつか入ってたり、バンドメンバーが即興演奏をし始めた際に良い感触だなって思えた音だったり、そういう音源の卵たちが隠されているよ。ウィリアム、お前の家で録音したものも今回のアルバムに入っているよな?

ウィリアム : うん、俺が録音したものやゲリットが録音したものも入ってるね。俺たちの自宅のスタジオで録音したもので、2015年や2016年の古いデモの部分が今回のアルバムの曲の一部になったりしている。毎回そういう風に古い音源が使えるわけじゃないんだよ。デモを録り直して、より良いサウンドにしようとするんだけど、場合によってはアイデアを記録しようとしただけの元の演奏の方がしっくりくることがあるし、雰囲気や核心を最も良く捉えてたりするんだ。

- 前作『Far Field』はジョン・コングルトン、前々作『Singles』はクリス・コーディーと近年は毎作違うプロデューサーと制作してきましたよね。新作『As Long As You Are』は、地元ボルチモアのスティーヴ・ライトとの共同プロデュースになりました。彼と一緒に作業することに決めた理由は?

ウィリアム : スティーヴはマイクの昔からの友人で、マイクが昔やっていたバンドの録音にも関わっていたし、そのバンドのライブのサウンドマンもやっていたんだ。今回のアルバムは始め、録音は自分たちでやって音響をスティーヴに頼もうとスタジオ入りした。でも作業をしていくうちに、俺たちが自分たちでは到達できない新しい何かを加えてくれる人が、誰かいないのかっていう考えが頭をよぎったんだ。そこである1つの曲のデータをたくさんのプロデューサーたち、7-8人くらいにミキシングのサンプルを作ってくれるように依頼して送り返してもらった。その返ってきたサンプルデータを精査した中で、スティーヴがミキシングして返してきた曲には、何か特別なものを感じたんだ。この過程を経たことで、俺たちはスティーヴと一緒にアルバムをプロデュースする自信がついた。だから今作では、以前のアルバムに比べてプロダクションやミキシングに関して自分たちの意見を通しやすかったんだ。

- スティーヴ・ライトとの録音作業はどうでしたか?

ウィリアム : 制作過程で大きかったのは、スケジュールや締め切りというものを考えなくて良かったということだった。『Singles』の時もそうだったけど、特に『Far Field』の制作では時間を意識していなければいけなかった。プロデューサーと一緒に仕事をすると「このアルバムは10日以内に完成させないといけない。その後は次のプロジェクトがあるからね」という感じだけど、スティーヴとは一切そういう話をしなかった。時間が足りなくなったら俺たちが空いている時間とスティーヴも空いている時間を見つけて、また作業を再開するという感じだった。セッションの終わりは、「じゃあ続きはまた1ヶ月後で!」とか、「2週間後にしよう!」という会話で終わった。それが本当に大きかった。『Far Field』は全ての録音作業を5週間で済ませなければいけなくて、それは俺たちに安心感を与えるには短すぎたんだ。過去の『Singles』や『The Far Field』などのアルバムで、ある意味失われてしまったバンドの主導権を取り戻すということ。その主導権というのは各アルバムによっても違うし、各バンド・メンバーによっても捉え方が違うと思うけど、みんなそれぞれ主導権を取り戻したいと思っていた具体的なポイントはあったと思う。今作はそれがうまくできたんだよ。」

サミュエル : 今回のアルバムは「これをやらなかった」という心配事がなかったんだ。スティーヴは俺たちの意見をしっかりと聞いてくれた。そこが大きかった。スティーヴには俺たちにはないスタジオの知識があって、俺たちのアイデアをスタジオでの音楽に落とし込んでくれる媒体としての役割に徹してくれた。そして、その落とし込んだ音楽を俺たちにしっかり聴かせてくれた。そこに自分のエゴを持ち込まなかった。「フューチャー・アイランズが求めているサウンドを引き出すために俺はいるんだ」という感じで対応してくれたんだ。

- 今作は、ダンサブルな曲からバラード曲まで、リズム・バリエーションやリズム・フィールが豊富です。今作からマイクも本格的に曲作りに参加したのですか?四人体制でのフューチャー・アイランズの曲作りは、どのように進んだのでしょうか?

マイク : ああ、俺も曲作りに参加したよ。今回のアルバムでは今までやったことのない曲作りの方法にチャレンジして、様々なアプローチをしてみようというのが1つの課題だった。例えば2017年や2018年のツアー中でのサウンド・チェックで行ったジャムの音源から曲を作ったり、2015年の古いデモを使ったり、ウィリアムのガレージでセッションしている音源がアイディアになった「Painter」って曲もある。様々な環境で作曲をしたり、アイディアを持ち寄ったり、たくさんの選択肢を試したんだ。

ウィリアム : 「For Sure」はゲリットが2015年にアイディアを出して作られていた古いデモが元になってるし、「Hit The Coast」はバンド全員が今回スタジオでジャムをしてできた曲だ。マイクが言ったように、今回は曲作りに対して様々な方法で臨みたいと思った。「City’s Face」と「Moonlight」も2015年の音源を元にしている。アイデアを思い付いた時に曲として完成されない素材は、もう使わないと思っていたんだけど、サムが昔の素材を復活させて生き返らせてくれた(笑)。

サミュエル : 俺の中で保存している曲が沢山あるんだよ。メンバーが持ち寄ってくれるもので曲としてはすごく良い性質のものだということは理解できるんだけど、俺の中にそれを曲として完成させるための感情を持ち合わせていない時もある。完成させるためのアイデアが見つかるまで、何年もかかることもあるんだ。クリエイティブな活動なら何でもそうなように、調子のいい場合は3曲くらいすぐにできる。でも、そうでない時は、自分を見つめて、自分の考えをまとめて、もしくは、自分の人生を生きて、曲が作れようになるまで待つんだ。曲を作るには、なんらかの経験をしなければいけないからね(笑)。人生を生きて、それを曲に反映できるようにする。俺にとってはそういうこともすごく大切なことなんだ。

- では、今作は前作と比べてバンドの曲作りに変化があったということなんですね?

サミュエル : 曲に対する実験的な態度という点や、アイデアに対してオープンな姿勢で臨んだという点で変わったと思う。以前だとバンドのみんなで同じ方向性を持って曲に取り組んでいたけれど、今回はそれぞれが違ったことをやれば良いと思ったし、実験的で変なサウンドやヒット曲っぽくない音に挑戦することに対して怖がらなくて良いと思ったんだ。スタジオでは、グリッチ音や繊細なサウンドでも逃さないように、実験的なことを沢山したよ。それは『In Evening Air』や『On the Water』と言った、『Singles』以前の俺たちの昔のアルバムに近いね。俺たちは当時も実験はしていたけれど、その自覚がなかった。俺たちはただ音楽を作っている若者だった。自覚がない方が、素晴らしい偉業を成し遂げることができることもあるだろう?実際に自分の活動を理解し始めると、クリエイティブのプロセスに足止めがかかってしまうこともある。だから今回は、再びいろいろなことをオープンにしようという試みだった。もう俺たちが得意なのは何かということも分かったし、俺たちバンドの強みも十分に分かったのだから、今作はそれ以外の音楽的要素においては賭けに出てみようと思ったんだ。

後編は後日公開

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