Unclouded
Melody’s Echo Chamber
RELEASE: 2025.12.05
フランス出身のメロディー・ポシェットによるプロジェクト、メロディーズ・エコー・チャンバー。マジー・スターやビーチ・ハウスさらにはステレオラブらが引き合いに出されるドリーミーでサイケデリック、そしてポップなサウンドが話題となり高い評価を獲得してきた彼女が、最新作をリリース!
『Unclouded』は、メロディーズ・エコー・チャンバーが新たに踏み出す、人生を肯定するチャプターを描いた作品である。アルバムのタイトルは、日本のアニメーション作家・宮崎駿の、"悪の中に善を、善の中に悪を見るのだ”という言葉から引用されている。
「以前は大人になっていくことにノスタルジーを感じていたけれど、いまは“無常”という概念を理解できるようになったから、もうそれを個人的な問題として受け取ることはなくなった」とメロディーは語る。その明るい見通しは、逃避願望を描いてきたこれまでの作品とは対照的に、本作では“自然とともに今を生きる”という感覚として、軽やかなグルーヴと現実的な歌詞の両方に表れている。
『Unclouded』に参加した豪華な布陣の中心にいるのは、スウェーデンの名匠スヴェン・ヴンダーだ。メロディーは彼の美学を印象派画家になぞらえている。ジョエル・ニルス・ダネルの名前でも知られる彼は、そのヴィジョナリーな音世界で高い評価を得ており、ラッパーのダニー・ブラウンらのプロデュースも手がけている。
ジョエルは共同プロデューサーとして参加し、作曲にも寄与、自身のユニークな音色を豊かなテクスチャーを持つキャンバスに注ぎ込んでいる。オープニング曲「The House That Doesn’t Exist」では、弦楽が軽やかに舞い上がり、めまいを覚えるほどの高みに達し、やがて低音域で心地よく収束していく。その相乗的な共同作業は、この曲に象徴的に表れている。メロディーのエネルギーに満ちたヴァースに、アンサンブルが応答するかたちだ。
「ジョエルはインストゥルメンタル音楽を作るのに慣れていて、ヴォーカリストとコラボするのは今回が初めてだった」と彼女は語る。「彼の音楽は贅沢で、私の音楽はより生っぽい。その二つの世界のバランスを見つけることが、今回のプロセスの中で最も刺激的だった」
制作初期、プロシェの頭の中で鳴っていた弦楽のイメージは、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの歪んだ揺らめきから、ニコの不協和な弦楽アンサンブル、さらにはヘンリー・マンシーニの生命力と優雅さにまで及んでいた。
「たくさんの参照点があった」と彼女は認める。「でも、彼はそのすべてを実現してしまったと思う!」スウェーデン人ヴァイオリニスト/ヴィオラ奏者で、ジョエルの常連コラボレーターでもあるヨセフィン・ルンステーンは、すべての弦楽パートを演奏し、アヴァンギャルドなセンスを作品に吹き込んでいる。さらに、ジョエルと共にバンドで活動するふたり―ギターのダニエル・エーゲンとベースのラヴ・オルサン―も参加。メロディーは彼らを「ビロードのグルーヴの達人」と称えている。また、先行シングルの「Daisy」は坂本慎太郎、クレイロ、ノラ・ジョーンズら参加のアルバムが話題のエル・ミシェルズ・アフェアーとの共作シングルとなっている。加えて、前2作でプロデュースを担ったライン・フィスクが本作でも参加し、ジョニー・マーを思わせる素晴らしいギターパートを全編に散りばめている。