大阪・南船場に出現した期間限定の『BEATINK Listening Space』。
ここでは洗練された空間の中、「曇りなき正確な音」を極限まで追求するスピーカー・ブランド BWVによる極上のリスニング体験が味わえる。もちろん会場には、BEATINKの取り扱う膨大なカタログ〜新譜レコードが並び、レーベル/アーティストの特別なアパレルやグッズも週ごとに展開されている。
そんな音楽カルチャーを愛するすべての人に向けた当会場へ、大阪シーンで重要なゲストを迎えてBEATINKの発信する音楽について話を伺った。
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ー トレンドが秒で変わる時代だからこそ、若い人たちには評価や知名度に囚われず「自分がどういう音楽に惹かれるのか」「どういう存在に惹かれるのか」ということに正直でいてほしい...
***ライター/宮谷行美/Pikumin
音楽メディアにてライター/インタビュアーとしての経験を経た後、現在はフリーランスで執筆活動を行う宮谷さん。書籍、Webメディア、CDやレコードの解説書、インタビューなど、さまざまな音楽発信の場で活躍している。
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【宮谷行美/BEATINK 推薦レーベル】
4AD/XL Recordings/Matador/Rough Trade
ー 好きなアーティストが大体この4つのレーベルのどれかに属している、という安直な理由なのですが、思い入れが強いのはやはり名門〈4AD〉。
レーベルを知ったのはドリームポップの礎であるCocteau Twins『Head Over Heels』に出会ってからで、Pixies、Pale Saints、Daughter、St. Vincentなど確固たる地位を確立したアーティストの抱えるだけでなく、Dry Cleaningのような大型新人も出てくるし、今も昔もシーンの主役たちを輩出しているところが強いですよね。ゴシック、ドリームポップから、ポスト・パンク、シューゲイズまでの耽美な世界観のあるアーティストはとにかく〈4AD〉に集まる、という安心感とブランド力の高さも随一だなと思います。
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【宮谷行美/Beat Records 最新カタログ推薦盤】
Caroline『Caroline 2』
ー ロンドン発の8人組バンド・Carolineの最新作は、年間ベスト入り確定の傑作でした。
18ヶ月間もの間セッションを重ねた末に制作されたとのことですが、プロダクションとしての完成度を保ちながら、インプロヴィゼーションならではの一期一会のハーモニーや余白があって、その人間らしさが尊くて涙が出ます。MogwaiやSigur Rosに通じるポストロックとアンビエントの共存に、前作から引き継がれるフォーク〜チェンバーポップ要素が溶け合うことで、安らぎと高揚感が同時に押し寄せてくる…という不思議な体験こそ、まさにCarolineの深淵なる魅力。「Coldplay cover」では、キッチンとリビングルームで異なる曲を同時に演奏し、マイクが部屋を行き来して収録して1つの曲にしてしまうという斬新すぎるアイデアを発揮。彼らの音楽はまさにアートだと思います。
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【宮谷行美/Beat Records 旧作カタログ推薦盤】
My Bloody Valentine『Isn't Anything』
ー シューゲイザーといえば、マイブラを挙げざるを得ない。ということで、〈DOMINO〉移籍後、1988年にリリースしたファーストアルバムを。マイブラといえば、やはり『Loveless』に代表されるような幽玄的なボーカルとフィードバック・ノイズの気持ち良い浮遊感が印象的ですが、Sonic YouthやPixiesにも近いパワフルなアンサンブルとありったけのノイズでぶん殴ってくるパンキッシュなスタイルと、「No More Sorry」や「Aii I Need」のような神秘的なダークサイケデリアが共存するところもまたマイブラらしさと言えるのではないかと思っています。以前大阪で開催されたBEATINKのポップアップストアにてDJをさせていただいた時にも選曲した「Sueisfine」はマイベストシューゲイズトラックの一角であり、暴力的なノイズ然り、揃える気のなさそうなツインボーカル然り、“歪み”の美しさを教えてくれる一曲。
VIDEO
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そんな宮谷さんの推薦盤からは、今年9月の来日公演で多くの感動を生んだ8人組バンドCarolineによる最新アルバム『Caroline 2』を、実際にBWVのスピーカーを通して試聴してもらった。
ー BWVのスピーカーは、109シネマズプレミアム新宿、坂本龍一「音を視る 時を聴く」展、大阪の文化施設・VSなど色んな場所で体験してきました。今回、改めてスピーカーを目の前に、Carolineの『Caroline 2』を聴かせていただいたのですが、低音は艶があってずっしり響き、高音は尖りがないのにクリアに心地よく耳に届くので、大音量でもストレスなく全音域の音を堪能できるところが良かったです。「Total euphoria」ではギターの木の鳴りがリアルに響くようで、中盤に訪れる爆音のノイズも重厚感も凄まじくて震えました。細やかなサウンドの掛け合いをまるごと掬い上げる、解像度の高さを改めて実感したので、ぜひもっと色んな施設で体験したいなと思いました。
国産スピーカー・ブランドBWV の協力のもと、大型3ウェイスピーカーシステムに加え、サブウーハーを2台導入し、非日常的で洗練された空間と音響を備えた当会場「BEATINK Listening Space」。惜しくも期間限定の大阪会場は9月28日まで...。
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「ゴシック、ドリームポップから、ポスト・パンク、シューゲイズまでの耽美な世界観のあるアーティストはとにかく〈4AD〉に集まる」と語り、My Bloody Valentineを推薦盤に挙げた宮谷さんは、近年のシューゲイザー周りにおけるリバイバル的な盛り上がり方に注目している。
ー 2008年のMy Bloody Valentine、2014年のRideやSlowdiveらの再始動、以降のレジェンドたちの相次ぐ新譜リリースやライブ活動などを経て、シューゲイザーがシーンに復帰・定着して早10年ほど。レジェンドたちが(もしかしたらバンドとしては最後かもしれない)変化を重ねていく一方で、TikTokではWispが2023年にリリースしたデビューシングル「Your Face」をきっかけに今も若い世代にシューゲイザーという存在が広まっていて、実際にシューゲイズを聴く高校生によると、マイブラたちの象徴的作品も、レコメンドでランダムに出会うため"新しい音楽"として出会うそう。後追いでジャンルに染まった身として、もしかしたら今ってシューゲイザーというジャンルが生まれた初期の頃と同じような体験をしているんじゃないか、というワクワクを感じています。(あとシューゲイズ関連のヴィンテージTシャツも高騰化してきているそうなので、今持っているマイブラのTシャツは大事にしようと思います。)
「新しい音楽」として、過去のアーカイヴ的作品に触れた若い世代は、こうした出会いをきっかけに、メディアやSNSを通じて、さらに深くのめり込んでいく。この過程を媒介する要であるライターとして活動する宮谷さんから、作品やジャンルの背景をより深く味わうための「掘り下げ方」や楽しみ方のコツを伺った。
ー 新しいものに出会う、掘り下げたい時は、やはりライナーノーツやディスクガイドは強い味方になってくれると思います。そこから気になるアーティストを調べたり、発展してきた時代背景やアーティストごとの風土に触れたり、たくさんの学びがあります。"自分が何を好きか"を考える、あるいは見つめ直すために、生涯刺激をくれる存在です。
SNSのおかげでファーストコンタクトはかなり取りやすい分、音楽よりも先に"評価"が目に入りやすいのもまた現状です。トレンドが秒で変わる時代だからこそ、若い人たちには評価や知名度に囚われず「自分がどういう音楽に惹かれるのか」「どういう存在に惹かれるのか」ということに正直でいてほしい。1秒聴いて肌に合わなければそれも正解です。その1秒までこだわる人が好きという人ほど、その感性を大切にしてほしいなと思います。
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ライター/宮谷行美/Pikumin
音楽メディアにてライター/インタビュアーとしての経験を経た後、現在はフリーランスで執筆活動を行う。坂本龍一『2020S』オフィシャルライター、書籍『シューゲイザー・ディスクガイドrevised edition』への寄稿の他、OTOTOY、Real Sound、CINRA、サイゾーなどのWebメディアでの執筆、海外アーティストの国内盤CD解説などを担当。
X :
@PIKUMIN_0502
Instagram :
@xxpikuminxx
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BEATINK Listening Space
住所: 〒542-0081 大阪府大阪市中央区南船場4-13-12 南船場OMビル 3F
開催期間: 2025年6月6日(金)〜9月28日(日) ※定休日有り。
営業日時詳細はBeatink.comと各種特設SNSをご確認ください。
Instagram :
@beatink_listening_space
X :
@Beatink_LS
ここでは洗練された空間の中、「曇りなき正確な音」を極限まで追求するスピーカー・ブランド BWVによる極上のリスニング体験が味わえる。もちろん会場には、BEATINKの取り扱う膨大なカタログ〜新譜レコードが並び、レーベル/アーティストの特別なアパレルやグッズも週ごとに展開されている。
そんな音楽カルチャーを愛するすべての人に向けた当会場へ、大阪シーンで重要なゲストを迎えてBEATINKの発信する音楽について話を伺った。
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ー トレンドが秒で変わる時代だからこそ、若い人たちには評価や知名度に囚われず「自分がどういう音楽に惹かれるのか」「どういう存在に惹かれるのか」ということに正直でいてほしい...
***ライター/宮谷行美/Pikumin
音楽メディアにてライター/インタビュアーとしての経験を経た後、現在はフリーランスで執筆活動を行う宮谷さん。書籍、Webメディア、CDやレコードの解説書、インタビューなど、さまざまな音楽発信の場で活躍している。
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【宮谷行美/BEATINK 推薦レーベル】
4AD/XL Recordings/Matador/Rough Trade
ー 好きなアーティストが大体この4つのレーベルのどれかに属している、という安直な理由なのですが、思い入れが強いのはやはり名門〈4AD〉。
レーベルを知ったのはドリームポップの礎であるCocteau Twins『Head Over Heels』に出会ってからで、Pixies、Pale Saints、Daughter、St. Vincentなど確固たる地位を確立したアーティストの抱えるだけでなく、Dry Cleaningのような大型新人も出てくるし、今も昔もシーンの主役たちを輩出しているところが強いですよね。ゴシック、ドリームポップから、ポスト・パンク、シューゲイズまでの耽美な世界観のあるアーティストはとにかく〈4AD〉に集まる、という安心感とブランド力の高さも随一だなと思います。
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【宮谷行美/Beat Records 最新カタログ推薦盤】
Caroline『Caroline 2』
ー ロンドン発の8人組バンド・Carolineの最新作は、年間ベスト入り確定の傑作でした。
18ヶ月間もの間セッションを重ねた末に制作されたとのことですが、プロダクションとしての完成度を保ちながら、インプロヴィゼーションならではの一期一会のハーモニーや余白があって、その人間らしさが尊くて涙が出ます。MogwaiやSigur Rosに通じるポストロックとアンビエントの共存に、前作から引き継がれるフォーク〜チェンバーポップ要素が溶け合うことで、安らぎと高揚感が同時に押し寄せてくる…という不思議な体験こそ、まさにCarolineの深淵なる魅力。「Coldplay cover」では、キッチンとリビングルームで異なる曲を同時に演奏し、マイクが部屋を行き来して収録して1つの曲にしてしまうという斬新すぎるアイデアを発揮。彼らの音楽はまさにアートだと思います。
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【宮谷行美/Beat Records 旧作カタログ推薦盤】
My Bloody Valentine『Isn't Anything』
ー シューゲイザーといえば、マイブラを挙げざるを得ない。ということで、〈DOMINO〉移籍後、1988年にリリースしたファーストアルバムを。マイブラといえば、やはり『Loveless』に代表されるような幽玄的なボーカルとフィードバック・ノイズの気持ち良い浮遊感が印象的ですが、Sonic YouthやPixiesにも近いパワフルなアンサンブルとありったけのノイズでぶん殴ってくるパンキッシュなスタイルと、「No More Sorry」や「Aii I Need」のような神秘的なダークサイケデリアが共存するところもまたマイブラらしさと言えるのではないかと思っています。以前大阪で開催されたBEATINKのポップアップストアにてDJをさせていただいた時にも選曲した「Sueisfine」はマイベストシューゲイズトラックの一角であり、暴力的なノイズ然り、揃える気のなさそうなツインボーカル然り、“歪み”の美しさを教えてくれる一曲。
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そんな宮谷さんの推薦盤からは、今年9月の来日公演で多くの感動を生んだ8人組バンドCarolineによる最新アルバム『Caroline 2』を、実際にBWVのスピーカーを通して試聴してもらった。
ー BWVのスピーカーは、109シネマズプレミアム新宿、坂本龍一「音を視る 時を聴く」展、大阪の文化施設・VSなど色んな場所で体験してきました。今回、改めてスピーカーを目の前に、Carolineの『Caroline 2』を聴かせていただいたのですが、低音は艶があってずっしり響き、高音は尖りがないのにクリアに心地よく耳に届くので、大音量でもストレスなく全音域の音を堪能できるところが良かったです。「Total euphoria」ではギターの木の鳴りがリアルに響くようで、中盤に訪れる爆音のノイズも重厚感も凄まじくて震えました。細やかなサウンドの掛け合いをまるごと掬い上げる、解像度の高さを改めて実感したので、ぜひもっと色んな施設で体験したいなと思いました。
国産スピーカー・ブランドBWVの協力のもと、大型3ウェイスピーカーシステムに加え、サブウーハーを2台導入し、非日常的で洗練された空間と音響を備えた当会場「BEATINK Listening Space」。惜しくも期間限定の大阪会場は9月28日まで...。
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「ゴシック、ドリームポップから、ポスト・パンク、シューゲイズまでの耽美な世界観のあるアーティストはとにかく〈4AD〉に集まる」と語り、My Bloody Valentineを推薦盤に挙げた宮谷さんは、近年のシューゲイザー周りにおけるリバイバル的な盛り上がり方に注目している。
ー 2008年のMy Bloody Valentine、2014年のRideやSlowdiveらの再始動、以降のレジェンドたちの相次ぐ新譜リリースやライブ活動などを経て、シューゲイザーがシーンに復帰・定着して早10年ほど。レジェンドたちが(もしかしたらバンドとしては最後かもしれない)変化を重ねていく一方で、TikTokではWispが2023年にリリースしたデビューシングル「Your Face」をきっかけに今も若い世代にシューゲイザーという存在が広まっていて、実際にシューゲイズを聴く高校生によると、マイブラたちの象徴的作品も、レコメンドでランダムに出会うため"新しい音楽"として出会うそう。後追いでジャンルに染まった身として、もしかしたら今ってシューゲイザーというジャンルが生まれた初期の頃と同じような体験をしているんじゃないか、というワクワクを感じています。(あとシューゲイズ関連のヴィンテージTシャツも高騰化してきているそうなので、今持っているマイブラのTシャツは大事にしようと思います。)
「新しい音楽」として、過去のアーカイヴ的作品に触れた若い世代は、こうした出会いをきっかけに、メディアやSNSを通じて、さらに深くのめり込んでいく。この過程を媒介する要であるライターとして活動する宮谷さんから、作品やジャンルの背景をより深く味わうための「掘り下げ方」や楽しみ方のコツを伺った。
ー 新しいものに出会う、掘り下げたい時は、やはりライナーノーツやディスクガイドは強い味方になってくれると思います。そこから気になるアーティストを調べたり、発展してきた時代背景やアーティストごとの風土に触れたり、たくさんの学びがあります。"自分が何を好きか"を考える、あるいは見つめ直すために、生涯刺激をくれる存在です。
SNSのおかげでファーストコンタクトはかなり取りやすい分、音楽よりも先に"評価"が目に入りやすいのもまた現状です。トレンドが秒で変わる時代だからこそ、若い人たちには評価や知名度に囚われず「自分がどういう音楽に惹かれるのか」「どういう存在に惹かれるのか」ということに正直でいてほしい。1秒聴いて肌に合わなければそれも正解です。その1秒までこだわる人が好きという人ほど、その感性を大切にしてほしいなと思います。
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ライター/宮谷行美/Pikumin
音楽メディアにてライター/インタビュアーとしての経験を経た後、現在はフリーランスで執筆活動を行う。坂本龍一『2020S』オフィシャルライター、書籍『シューゲイザー・ディスクガイドrevised edition』への寄稿の他、OTOTOY、Real Sound、CINRA、サイゾーなどのWebメディアでの執筆、海外アーティストの国内盤CD解説などを担当。
X : @PIKUMIN_0502
Instagram : @xxpikuminxx
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BEATINK Listening Space
住所: 〒542-0081 大阪府大阪市中央区南船場4-13-12 南船場OMビル 3F
開催期間: 2025年6月6日(金)〜9月28日(日) ※定休日有り。
営業日時詳細はBeatink.comと各種特設SNSをご確認ください。
Instagram : @beatink_listening_space
X : @Beatink_LS