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Perfume Genius / フジロック’25ライブレポートが到着!天才音楽家、パフューム・ジーニアスによる約11年ぶりとなる日本でのパフォーマンス!

2025.07.29

Perfume Genius / フジロック’25ライブレポートが到着!天才音楽家、パフューム・ジーニアスによる約11年ぶりとなる日本でのパフォーマンス!

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Perfume Genius / フジロック’25ライブレポートが到着!天才音楽家、パフューム・ジーニアスによる約11年ぶりとなる日本でのパフォーマンス!

Photo by Kazma Kobayashi

最新アルバム『Glory』をひっさげ、なんと11年ぶりの来日となるパフューム・ジーニアス。タイトなカットソーにブーツカットのジーンズに身を包んだマイク・ハドレアスとバンドがレッド・マーキーのステージに現れ、ピアノのフレーズが孤独感を掻き立てる荘厳な「In a Row」で幕を開ける。ステージに据えられた青い布にからまり、体をくねらせながら歌うハドレアスの一挙手一投足から目が離せない。「It's a Mirror」でのコーラスのシューゲイズな盛り上がりも爆発的で、ハドレアスは床に座りこみ、「No Front Teeth」では椅子にハンドマイクを置いてアクロバティックな姿勢で絶唱する。

ここまでは最新作『Glory』のナンバーが続いたあと、2017年の『No Shape』収録のアンセミックな「Slip Away」では歓声がさらに強まる。ほんとうにこの曲を拳を突き上げながら聴くことができるなんて!一転して「Left For Tomorrow」では浮遊感あふれるベースラインに乗ってハドレアスは肩を大きく揺らしながら歌う。「On the Floor」はエイティーズ・ポップスを思わせるソウルフルなナンバー。後半ではミラーボールも点灯し、楽天的な曲調と対照的に絶望を表現したリリックが共鳴する。「Jason」では紫の照明のなか切々としたファルセットを聞かせる。夢のなかにいるようなセンシュアルなムードに息を呑む。

ギターのグレゴリー・ユールマン、ベースのパット・ケリー、ドラムのティム・カー、公私に渡るパートナーであるキーボードのアラン・ワイフルスなど、アルバムにも参加している面々によるバンドは決して派手ではないのだが、ハドレアスの表現を的確にサポートし、クラシック・ロックやアメリカーナなど様々な色彩を加えていく。彼自身がこのバンドとの一体感あふれるプレイから大きなインスピレーションを受けていることは間違いなく、そのケミストリーが手に取るように感じられる。新作でのワイフルスとブレイク・ミルズのプロデュースワークはこのバンド感を音源に刻みつけることが目的だったのだとあらためて感嘆する。メンバーを紹介したあと、「Clean Heart」は心臓の鼓動のようなドラムの響きが勇壮さをさらに掻き立てる。「Otherside」は讃美歌を思わせるバラードで、ピアノとヴォーカルだけの静かな音色で始まり、その後、轟くようなインストゥルメンタルへと展開していき、彫像のように体をのけぞらせると客席から歓声が巻き起こる。神聖なムードは「Describe」でも続き、スライド・ギターが生む重厚なディストーションがシューゲイズな空気を生む。アウトロではマイクスタンドを掲げたりと、後半になるに従い、シアトリカルなパフォーマンスがさらに際立っていく。

ここで披露されたマジー・スターのドリーム・ポップ・クラシック「Fade Into You」のカバーがハマりすぎだった。青いライティングに照らされて、消え入りそうな感情を噛みしめるリリックとメロディを催眠的なリズムのうえでゆっくりと繰り返していくさまに、ハドレアスがセットリストの定番にしているのもうなずける。そして大曲「Eye in the Wall」はもっともアブストラクトなトラックといっていいだろう。不穏なイントロから4つ打ちのダンサブルなプロダクションへ移り変わっていく。トランス状態へと誘うような賛美歌的なシンセサイザーと電子音、雷鳴のごとく轟くギターのノイズが渾然一体となると、会場はさらに熱狂に包まれる。ハドレアスは布にからまり、ステージに倒れ込み、うつぶしながら歌い続ける。パフューム・ジーニアスの場合、これが非現実的なショーのパフォーマンスとしてというよりも、日常の延長で彼の身体感覚を突きつけられるように感じられるのが興味深い。

間髪を入れずカオティックな「My Body」になだれこむ。すさまじい轟音とともに、マイクケーブルと絡み合い、もつれながらシャウトする。もんどり打ち、からだをねじらせ恍惚とした表情を浮かべる姿は、聖と俗が一体化したようで、超絶にエモーショナルだ。そして、締めくくりとなる「Queen」の〈Don't you know your queen?〉という最初のフレーズが歌われた瞬間、爆発的な悲鳴があがる。同性愛嫌悪に反抗し、自分自身であれとリスナーに問いかけるこの挑発的な曲は、2014年の『Too Bright』に収録され、彼のキャリアの変革を象徴するナンバーとなった。きらびやかなプロダクションをライブ仕様にダイナミックにアップデートさせたさせたアンサンブルのなかで、勝ち誇ったようにマイクスタンドを掲げる姿は、クィアネスを掲げるこの曲のテーマと重なり、胸を打たれた。

パフューム・ジーニアスは親密さと演劇的なスペクタクルが融合したパフォーマンスでレッド・マーキーを魅了し、堂々たる帰還を果たした。前の来日時はセンシティヴでメランコリックな面が強調され、オーディエンスもそれを固唾を呑んで見守る、という印象が強かったけれど、今回は違う。より力強くドラマティックに自身のストーリーを作り上げていき、生々しいヴォーカルは痛みを歌いながら包容力もたたえていて、苦悩と生の謳歌をオーディエンスと共有する懐の深さが、言いようもないカタルシスを生み出していた。終演後も「ブラボー!」という声がフロアのあちこちからやまない。いまの私たちにはもっとパフューム・ジーニアスが必要なのだ。

Text by 駒井憲嗣

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ラインナップの第四弾発表にて明かされたパフューム・ジーニアスのフジロックへの出演は大きな喜びを持って迎えられた。
何しろPerfume Geniusの来日公演は11年ぶり。
10年代、20年代それぞれのUSインディーシーンを代表するアルバムとして既に確立された『No Shape』『Set My Heart On Fire Immediately』に加え、最新作『Glory』まで携えた待望の来日公演の舞台がフジロックであることに、始まる前からライブの成功を確信したリスナーも多かっただろう。

夕下がりのRED MARQUEEのステージには楽器と共に青い椅と青いヴェールが無造作に置かれ、青いビジョンと共に観客の期待を煽る。

定刻になり、パフューム・ジーニアスは深いリバーブのかかったシンセの音と共に登場し、椅子に腰掛けながら「In a Row」を披露。静かに音が重なっていくパートから歪んだギターがリードするセクションへ移行した際のダイナミズムに思わず拍手が広がる。このバンドサウンドの生々しさはRED MARQUEEだからこそ良く響く。

続いて最新作から「It's a Mirror」「No Front Teeth」を続けて演奏。観客の視線を奪っていたのはパフューム・ジーニアスの一挙手一投足だ。柔らかなピアノの音が鳴る際は母親に縋るように椅子と戯れ、バンド全体が激しさを増した際は背中を反りながら天を見据え、メロディを吐き出す。バレエやコンテンポラリーダンスにも見えるそのステージングがアルバム『Glory』のサウンドに更なる肉体性を与える。

前半のハイライトは2020年のアルバム『Set My Heart On Fire Immediately』から披露された「On the Floor」だ。観客の手拍子に合わせて鳴らされたイントロで一際大きな歓声が上がる。ダンサンブルなビートに合わせ舞台を動き回るパフューム・ジーニアスの献身性により、観客とステージの親密性が増していく。

曲間で椅子と戯れるお茶目な一面を見せながら、ライブは後半へ向かう。ピアノの静謐な響きと会場を覆い尽くすギターノイズが共存する「Otherside」は今回のパフューム・ジーニアスのライブの美しさを端的に表していた。自身の弱さを音楽にするしかない所在のなさや、制御しきれない暴力性といったパフューム・ジーニアスの中にある分裂がフォーク/ノイズ/ダンス/アンビエンスが混在した曲に現れる。そして、その分裂が目の前にいるパフューム・ジーニアスが自身の肉体によってパフォーマンスとして昇華される。

マジー・スターのカバー「Fade Into You」、凶暴なビートが印象的な「Eye in the Wall」と立て続けに披露し、クライマックスでは昨年10周年を迎えたアルバム『Too Bright』より「My Body」「Queen」を演奏。ステージに置かれた青いヴェールと絡み合いながら〈Don’t you know me?〉と歌う姿はあまりに艶かしく、フロアからは感嘆の声が漏れていた。「ありがとうございました!」と敬礼と共に言い残し、ライブは終幕を迎えた。

パフューム・ジーニアス自身の身体性により楽曲が肉体をもって立ち上がり、新たな物語が織りなされていく。どこまでもシアトリカルな1時間だった。

Text by 葱

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