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King Krule / キング・クルールの最新アルバム『Man Alive!』の発売を記念して行われたロンドンのプレミア・ギグを緊急レポート!

Photo by Banquet Records / Bobby Vasilev

2020.02.28

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King Krule / キング・クルールの最新アルバム『Man Alive!』の発売を記念して行われたロンドンのプレミア・ギグを緊急レポート!

Photo by Banquet Records / Bobby Vasilev

名前にキングを冠しつつ、「王様は裸じゃん」と看破する子供のピュアな視線を備えているアーチーは、こんがらがった世代にとっての解毒剤なのかもしれない。

「キングの(キングストンへの)凱旋」なんてフレーズがつい頭に浮かんだ。ロンドン近郊の街キングストンの名物レコード店Banquet Recordsが主宰するインディ/オルタナ系イヴェント「New Slang」で開催された『Man Alive!』プレミア・ギグは、若きカリスマの人気とパワーを思い知らされるライヴだった。

 昭和期に建てられた映画館を改装しただけあって、キャパ2000近い会場の古めかしい内装はレトロでどこかいかがわしいチャームを醸している。ジャズやラウンジのオールド・スクール感覚をひねったキング・クルールことアーチー・マーシャルの音楽性にぴったりのお膳立てと言えるが、スタンディングの場内はZ世代で9割埋まっている。イギリスでインディ・ギター・ロックのショウに行くと「80年代にザ・スミスを観たぜ」系の中年ファンをよく見かけるし開演前のBGMにはジョゼフKも流れていた――とはいえ、青春真っ盛りなファンたちの集いにシーンが再び新旧交代したのをまざまざと感じる。

 そのコミュニティの中心に君臨する「王」がエレクトロニック、サックスを含むバンド5名に続いて最後に登場、大歓声が湧く。飾り気のないシャツにズボンのアーチーを始めメンバーは普段着姿で、学生サークルのバンドと言っても通じそうなカジュアルさ。しかしうず潮でうなるサーフ・ギターを縫って屈強なベースがとどろきド迫力のヴォーカルとサックスが競い合う1曲目“Has This Hit? ”から、彼らが実にタイトに結びついた個性的なサウンドを誇る百戦錬磨の音楽集団であるのが分かる。“Dum Surfer”のユルいスラッカー味、ウィルコ・ジョンソンを彷彿する電撃ギター、早くも合唱の起きた“A Lizard State”と見事に緩急をつけつつ、セット前半は“Cellular”から始まり新作収録曲が中心の構成。盤ではリリカルなメロディが主体の“Perfecto Miserable”や“Alone, Omen 3”も、バンドとの生のケミストリーが加わるとライヴではペイヴメントばりのジャムへと爆発。ヒップホップのビートに乗ってニュー・メタル調な重さで迫る“Stoned Again”からヴェルヴェット・アンダーグラウンド型ガレージ・ロック“Comet Face”への流れは序盤のハイライトで、マニックな熱が伝播したフロアはモッシュで沸騰しダイヴをかます客も出た。

 その熱を冷ますようにリヴァーブ・ギターが青白いガス燈の繊細な明滅を響かせる“(Don’t Let the Dragon) Draag On”、 ドゥーワップ調なスウィングがたまらなく切ない“Underclass”をクッションに置きつつ、後半は1&2枚目からの人気曲を軸に盛り上げる。サッカー場で観客が叫ぶチャントを思わせるコール&レスポンスから始まり、スカ+アフロビート+ラテンなカーニヴァル・グルーヴの広がりで会場を丸ごと踊らせた“Half Man Half Shark”、美しいギター・メロから全身でガラガラ声を振り絞るエモーショナルな熱演になだれ込むビルドアップが最高だった“The Ooz”。ムードたっぷりなサックスのソロでパーティのチーク・タイムが似合うロマンチックさを降らせた“Baby Blue”でメンバー紹介をはさみ、ラストは初期の代表曲で即座にシンガロングが始まった“Easy Easy”。弾き語りに近い演奏は簡潔なぶん、思春期のフラストレーションや抑圧に対する反発を活写する歌詞とリズミカルなギターが矢のように刺さってくる。サビの絶叫でほろ苦さが吐き出された後に吹き抜けるカタルシスに『大人は判ってくれない』のエンディングを思い出さずにいられなかった。

 3月から始まる欧英ツアーはロンドンの名門会場ブリクストン・アカデミー2公演を含む大規模なもの。そのウォームアップと言える今夜のショウは約70分とコンパクトで、ステージが狭いゆえに動き回れずバンドはいささか窮屈そうに見えた。それでも彼らはジャンルを横断する柔軟さとポテンシャルの高さを見せつけてくれたし、大舞台でこそその暴れっぷりは映えるだろう。ステップ・アップの時期を迎えているのを感じて嬉しいが、やはりもっとも心に残ったのはアーチーのリアルさだった。時に照れくさそうにはにかみ、時にディープな葛藤をさらけ出し情感にまかせてギターを掻きむしり、時にポケットに片手を突っ込んだままぶっきらぼうに歌う――「ありのままの自分」を演出しキュレートするSNS時代のフェイクでも、過剰なエモでもない、常に聴衆と至近距離でガードを下ろさないナチュラルさとバンマスとしての嗅覚の共存は貴重。名前にキングを冠しつつ、「王様は裸じゃん」と看破する子供のピュアな視線を備えているアーチーは、こんがらがった世代にとっての解毒剤なのかもしれない。

ライブレポート:坂本麻里子

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