Future Islands
前作『Singles』(2014年)をリリースしてからの数年間に、ボルティモアを拠点とするバンド、フューチャー・アイランズ(Future Islands)は大きな変化を経験した。カルト人気を誇る存在から、シンセポップのアイコンへと一躍のし上がった。大ヒット・シングル「Seasons (Wating on You)」を始めとする中毒性の高い曲は、熱心なファンベースにはおなじみだった荘厳な至福感に世界を酔わせ、精力的なツアーで知られる彼らは、2015年7月には1000回目のライヴをプレイ。2016年2月にはデビュー10周年を祝った。そんな絶好調にあるフューチャー・アイランズが、新作『The Far Field』を引っさげてシーンに帰還。本作には、胸の高鳴るラヴ・ソングから旅立ちの歌まで、彼らにしか作れない12曲が収録されている。

『Singles』での躍進を土台にしつつ更に磨きをかけた『The Far Field』には、サミュエル・T・ヘリング(Samuel T. Herring:ヴォーカル、作詞)、ウィリアム・キャッション(William Cashion:ベース、ギター)、そしてジェリット/ゲリット・ウェルマーズ(Gerrit Welmers:キーボード、プログラミング)の3人が手掛けた、非の打ち所のないフックと心安らぐ率直な歌詞が満載だ。バンドが新作の曲作りに着手したのは2016年1月、ノース・カリフォルニア沿岸でのこと。その後、同年を通じてボルティモアで曲作りを続け、やがて偽名を使った一連のシークレット・ギグでこれらの新曲の試運転を行った。2016年11月には、グラミー賞受賞プロデューサーのジョン・コングルトン(John Congleton)と共に、ロサンゼルスの<サンセット・サウンド・レコーダーズ>に腰を落ち着けた彼ら。そこはビーチ・ボーイズからプリンスまで、あらゆる偉大なアーティストが傑作を録音した伝説のスタジオである。

その結果完成したのが、フューチャー・アイランズ史上最高と言えるこの楽曲群だ。ここでは、彼らがこの10年間に追究してきたテーマの精神的な総括と共に、彼らの持ち味であるアート・ポップ・サウンドの更なる精製が実現。また今作は、マイケル・ロウリー(Michael Lowry)による生ドラムが初めてフィーチャーされているアルバムでもある。彼はインターネット上の口コミで爆発的な話題となった米CBS『レターマン・ショー』出演時の「Seasons」のパフォーマンスに先立ち、このバンドに参加。コングルトンのプロダクションと、パトリック・マクミン(Patrick McMinn)による管弦楽アレンジが施された『The Far Field』で、フューチャー・アイランズは、これまで以上に壮大で豊かなサウンドスケープを作り上げており、音的には華やかで開放的であると同時に、歌詞的には剥き出しかつ率直な心情が表現されている。

フューチャー・アイランズにとっては5作目、そして4AD移籍後2枚目となるこの『The Far Field』には、精緻に作り上げられた情熱的な12曲が収録されており、聴く度にお気に入りが変わること請け合いだ。ヘリングがブロンディーのデビー・ハリーとデュエットしている魅力的な「Shadows」では、心の痛みに素直に目を向けており、苦悩や自分の欠点と真正面から向き合うことによって希望と力と見出す過程が描かれている。また「Time on Her Side」と「Day Glow Fire」の両曲は、最も辛い思い出の中にでさえ美が潜んでいることを証明していて、失恋すらも人生により深い意味を与えてくれると断言。一方「North Star」や、第一弾シングル「Ran」、そして「Beauty of the Road」では、旅に出て、愛と自己認識とを追求し、そこで見出したものを受け入れるというのが本作のテーマであることが示されている。真情溢れた「Through the Roses」で、ヘリングはこう歌っている。

「人間であるという、ただそれだけのことが楽じゃない
光も煙もスクリーンも
事態を良くはしてくれない
俺は君ほど強くはなくて、怯えてるんだ…
でも乗り切れるさ、一緒なら
一緒なら
きっと俺達は乗り切れる」

友人達や、増加の一途を辿っているファンのコミュニティからインスピレーションを得た『The Far Field』では、このバンドが中心に据えてきたテーマが見事に表現されている。つまり、心の傷つきやすさにはパワーがあるということ、笑いながら同時に泣く方法を人は見つけることができ、そのおかげで強くなれるということ。『The Far Field』は、人が誰しも抱えている、傷つきながらも勇敢でロマンティックな内なる自分に、直接語りかけているのだ。踊り、愛し、自らを省みるために作られた、45分間の素晴らしいポップ・ミニ・シンフォニー。人は自分に正直でありながら、同時に成長し進化することが可能だと思い出させてくれる12の美しい曲。それはこのバンドが、この10年以上やり続けてきたことである。

Future Islands

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前作『Singles』(2014年)をリリースしてからの数年間に、ボルティモアを拠点とするバンド、フューチャー・アイランズ(Future Islands)は大きな変化を経験した。カルト人気を誇る存在から、シンセポップのアイコンへと一躍のし上がった。大ヒット・シングル「Seasons (Wating on You)」を始めとする中毒性の高い曲は、熱心なファンベースにはおなじみだった荘厳な至福感に世界を酔わせ、精力的なツアーで知られる彼らは、2015年7月には1000回目のライヴをプレイ。2016年2月にはデビュー10周年を祝った。そんな絶好調にあるフューチャー・アイランズが、新作『The Far Field』を引っさげてシーンに帰還。本作には、胸の高鳴るラヴ・ソングから旅立ちの歌まで、彼らにしか作れない12曲が収録されている。

『Singles』での躍進を土台にしつつ更に磨きをかけた『The Far Field』には、サミュエル・T・ヘリング(Samuel T. Herring:ヴォーカル、作詞)、ウィリアム・キャッション(William Cashion:ベース、ギター)、そしてジェリット/ゲリット・ウェルマーズ(Gerrit Welmers:キーボード、プログラミング)の3人が手掛けた、非の打ち所のないフックと心安らぐ率直な歌詞が満載だ。バンドが新作の曲作りに着手したのは2016年1月、ノース・カリフォルニア沿岸でのこと。その後、同年を通じてボルティモアで曲作りを続け、やがて偽名を使った一連のシークレット・ギグでこれらの新曲の試運転を行った。2016年11月には、グラミー賞受賞プロデューサーのジョン・コングルトン(John Congleton)と共に、ロサンゼルスの<サンセット・サウンド・レコーダーズ>に腰を落ち着けた彼ら。そこはビーチ・ボーイズからプリンスまで、あらゆる偉大なアーティストが傑作を録音した伝説のスタジオである。

その結果完成したのが、フューチャー・アイランズ史上最高と言えるこの楽曲群だ。ここでは、彼らがこの10年間に追究してきたテーマの精神的な総括と共に、彼らの持ち味であるアート・ポップ・サウンドの更なる精製が実現。また今作は、マイケル・ロウリー(Michael Lowry)による生ドラムが初めてフィーチャーされているアルバムでもある。彼はインターネット上の口コミで爆発的な話題となった米CBS『レターマン・ショー』出演時の「Seasons」のパフォーマンスに先立ち、このバンドに参加。コングルトンのプロダクションと、パトリック・マクミン(Patrick McMinn)による管弦楽アレンジが施された『The Far Field』で、フューチャー・アイランズは、これまで以上に壮大で豊かなサウンドスケープを作り上げており、音的には華やかで開放的であると同時に、歌詞的には剥き出しかつ率直な心情が表現されている。

フューチャー・アイランズにとっては5作目、そして4AD移籍後2枚目となるこの『The Far Field』には、精緻に作り上げられた情熱的な12曲が収録されており、聴く度にお気に入りが変わること請け合いだ。ヘリングがブロンディーのデビー・ハリーとデュエットしている魅力的な「Shadows」では、心の痛みに素直に目を向けており、苦悩や自分の欠点と真正面から向き合うことによって希望と力と見出す過程が描かれている。また「Time on Her Side」と「Day Glow Fire」の両曲は、最も辛い思い出の中にでさえ美が潜んでいることを証明していて、失恋すらも人生により深い意味を与えてくれると断言。一方「North Star」や、第一弾シングル「Ran」、そして「Beauty of the Road」では、旅に出て、愛と自己認識とを追求し、そこで見出したものを受け入れるというのが本作のテーマであることが示されている。真情溢れた「Through the Roses」で、ヘリングはこう歌っている。

「人間であるという、ただそれだけのことが楽じゃない
光も煙もスクリーンも
事態を良くはしてくれない
俺は君ほど強くはなくて、怯えてるんだ…
でも乗り切れるさ、一緒なら
一緒なら
きっと俺達は乗り切れる」

友人達や、増加の一途を辿っているファンのコミュニティからインスピレーションを得た『The Far Field』では、このバンドが中心に据えてきたテーマが見事に表現されている。つまり、心の傷つきやすさにはパワーがあるということ、笑いながら同時に泣く方法を人は見つけることができ、そのおかげで強くなれるということ。『The Far Field』は、人が誰しも抱えている、傷つきながらも勇敢でロマンティックな内なる自分に、直接語りかけているのだ。踊り、愛し、自らを省みるために作られた、45分間の素晴らしいポップ・ミニ・シンフォニー。人は自分に正直でありながら、同時に成長し進化することが可能だと思い出させてくれる12の美しい曲。それはこのバンドが、この10年以上やり続けてきたことである。