Louis Cole @ WHITE STAGE 7/29 (SAT)
昨年12月の単独公演に立ち会ったファンの願いが、早くも実現に至った。そう、あのルイス・コール・ビッグ・バンドが満を持してフジロックフェスティバルにやってきたのだ。バンド・メンバーはルイスを筆頭に、レイ・ディットゥルスウェイ(Key)とペッター・オロフッソン(b)。コーラスからダンスから賑やかしまで担うのが、アイシス・ジェラルド、フェンサンタ・メンデス、ノウアーの相棒ジェネヴィーヴ・アルターディ。そしてホーン・セクションが太田垣正信(Tb)、MELRAW(As)、武嶋聡(Fl)、陸悠(Bs)、佐瀬悠輔(Tp)、馬場智章(Ts)、TOHO(Tub)。このホーン隊とは昨年末の公演が初手合わせだったが、その手応えが予想以上によかったのだろう。前述の公演でもルイスは「(このホーン隊と)絶対にまたやる」と語っていたが、まさにそれが有言実行となったわけだ。しかも今回は二日目ホワイト・ステージの大トリとして、1時間半たっぷりのロング・セット。なんというか、これはもう始まる前から“最高”が約束されているようなもんじゃないか。
さて、遂にその時がやってきた。これは混雑必至だろうと早めに前方で待機していたところ、なんと開演予定時刻の10分前にルイスが登場。機材チェックがてら、ステージ後方の巨大スクリーンに自前のMac Bookのログイン画面を写し、開演前からオーディエンスの爆笑を誘っていた。スタート前の雰囲気をみずから温めるルイス・コール、流石である。
そしていよいよ開演。オープニングを飾るのは 「F it up」。サンプリング・ビートのループ上でルイスが歌い出し、彼のカウントを合図にビッグ・バンドの演奏が加わると、エレクトロニクスと生演奏が渾然一体となった一大ファンク・ショーの始まりだ。各プレイヤーが16をひたすら刻み続ける、超ストイックなバンド・アンサンブル。腰から下を刺激しまくる、重量感たっぷりのグルーヴ。そして歌い、踊り、時に小型サラブレッドの人形(通称ルイス・コール号)にまたがり、時には殴り合いの寸劇も披露する3人のコーラス隊。笑えるし、身体を動かさずにいられない。なんというか、ダンス・ミュージックとしての性能があまりにも高すぎるのだ。実際、この演奏を目の当たりにしても踊らずにいられる人などいるのだろうか。
このバンドの中心はもちろんルイス・コールだが、バンドの主役は彼だけではない。そう、ルイス・コール・ビッグ・バンドはプレイヤー全員に見せ場が用意されているのだ。ソロをとる奏者が曲ごとに入れ替わり、そのたびにメンバーの名前を紹介するルイスの姿を見ていると、彼がここ日本で合流したホーン・セクションの面々を“サポート”と捉えていないことがよくわかる。
一方で、ルイス・コールの楽曲はその多くが彼個人の多重録音によって生まれたものでもある。それをステージ上で再現してみせたのが 「Not Needed Anymore」。ルイスが手打ちのビートにその場でギターのフレーズを重ねてループを作り出していく様は、この極上のパーティ・ミュージックが、実は彼のプライヴェートな空間から生まれたのだということを改めて伝えているようでもあった。
予定されていた本編が終了すると、ルイスたちは舞台袖に下がらずそのままアンコールをスタート(笑)。それでも時間が余ったとのことで急きょ1曲を追加で演奏し、疾風怒濤の1時間半はあっという間に過ぎ去っていった。
終演後、物販エリアではあのルイス・コール号が販売されていたという。そしてフジロックの場内ではその後もルイスの目撃情報が多数報告され、ソーシャル・メディアでは一時ルイスとの記念写真が溢れかえる事態となった。予定調和など皆無の超絶パフォーマンスと神出鬼没の行動で、フジロックの話題をかっさらったルイス・コール。この3日間を通じて最も強烈なインパクトを残したのは、間違いなく彼だった。
Text by 渡辺裕也
昨年12月の単独公演に立ち会ったファンの願いが、早くも実現に至った。そう、あのルイス・コール・ビッグ・バンドが満を持してフジロックフェスティバルにやってきたのだ。バンド・メンバーはルイスを筆頭に、レイ・ディットゥルスウェイ(Key)とペッター・オロフッソン(b)。コーラスからダンスから賑やかしまで担うのが、アイシス・ジェラルド、フェンサンタ・メンデス、ノウアーの相棒ジェネヴィーヴ・アルターディ。そしてホーン・セクションが太田垣正信(Tb)、MELRAW(As)、武嶋聡(Fl)、陸悠(Bs)、佐瀬悠輔(Tp)、馬場智章(Ts)、TOHO(Tub)。このホーン隊とは昨年末の公演が初手合わせだったが、その手応えが予想以上によかったのだろう。前述の公演でもルイスは「(このホーン隊と)絶対にまたやる」と語っていたが、まさにそれが有言実行となったわけだ。しかも今回は二日目ホワイト・ステージの大トリとして、1時間半たっぷりのロング・セット。なんというか、これはもう始まる前から“最高”が約束されているようなもんじゃないか。
さて、遂にその時がやってきた。これは混雑必至だろうと早めに前方で待機していたところ、なんと開演予定時刻の10分前にルイスが登場。機材チェックがてら、ステージ後方の巨大スクリーンに自前のMac Bookのログイン画面を写し、開演前からオーディエンスの爆笑を誘っていた。スタート前の雰囲気をみずから温めるルイス・コール、流石である。
そしていよいよ開演。オープニングを飾るのは 「F it up」。サンプリング・ビートのループ上でルイスが歌い出し、彼のカウントを合図にビッグ・バンドの演奏が加わると、エレクトロニクスと生演奏が渾然一体となった一大ファンク・ショーの始まりだ。各プレイヤーが16をひたすら刻み続ける、超ストイックなバンド・アンサンブル。腰から下を刺激しまくる、重量感たっぷりのグルーヴ。そして歌い、踊り、時に小型サラブレッドの人形(通称ルイス・コール号)にまたがり、時には殴り合いの寸劇も披露する3人のコーラス隊。笑えるし、身体を動かさずにいられない。なんというか、ダンス・ミュージックとしての性能があまりにも高すぎるのだ。実際、この演奏を目の当たりにしても踊らずにいられる人などいるのだろうか。
このバンドの中心はもちろんルイス・コールだが、バンドの主役は彼だけではない。そう、ルイス・コール・ビッグ・バンドはプレイヤー全員に見せ場が用意されているのだ。ソロをとる奏者が曲ごとに入れ替わり、そのたびにメンバーの名前を紹介するルイスの姿を見ていると、彼がここ日本で合流したホーン・セクションの面々を“サポート”と捉えていないことがよくわかる。
一方で、ルイス・コールの楽曲はその多くが彼個人の多重録音によって生まれたものでもある。それをステージ上で再現してみせたのが 「Not Needed Anymore」。ルイスが手打ちのビートにその場でギターのフレーズを重ねてループを作り出していく様は、この極上のパーティ・ミュージックが、実は彼のプライヴェートな空間から生まれたのだということを改めて伝えているようでもあった。
予定されていた本編が終了すると、ルイスたちは舞台袖に下がらずそのままアンコールをスタート(笑)。それでも時間が余ったとのことで急きょ1曲を追加で演奏し、疾風怒濤の1時間半はあっという間に過ぎ去っていった。
終演後、物販エリアではあのルイス・コール号が販売されていたという。そしてフジロックの場内ではその後もルイスの目撃情報が多数報告され、ソーシャル・メディアでは一時ルイスとの記念写真が溢れかえる事態となった。予定調和など皆無の超絶パフォーマンスと神出鬼没の行動で、フジロックの話題をかっさらったルイス・コール。この3日間を通じて最も強烈なインパクトを残したのは、間違いなく彼だった。
Text by 渡辺裕也