ロンドンを拠点とするプロデューサーのジョシュ・ロイド=ワトソンとトム・マクファーランドからなるフューチャー・ディスコ・ユニット、ジャングル(Jungle)の来日公演が5月27日、Spotify O-EASTにて開催。4月に世界最大級の野外フェス、コーチェラにも出演したばかりとあって期待感も高まる。
まずはサポート・アクトの森とチョモによる2人組、どんぐりずがエレクトリックなダンス・トラックにパワフルなラップを乗せ、景気良く夜をスタート。ソールドアウト公演とあって、フロアはすでにパンパンだ。開演前にはメイン・アクトのジャングルとどんぐりずの客層が違っているのではないかと危惧していたが、そんな心配は無用だったとすぐに気がつく。月曜の夜からジャングルで踊ろうとフロアに集まった観客にどんぐりずが刺さらないはずはないのだ。ゲストにNAGAN SERVERを呼び込んでさらにブチアゲて、約30分程でフロアをアッツアツにして、彼らは颯爽と去って行った。
30分ほどの転換を挟み、20:00ちょうどに暗転すると、いよいよメイン・アクト、ジャングルの登場だ。昨年リリースされた最新作『Volcano』を象徴するカラーであろう赤い照明とスモークの中、メンバーのシルエットが現れる。6人のバンド編成で、立ち位置的には左右対称。ステージに立っただけで少々うっとりしてしまうような美しさがある。そして、ジャングルの名刺代わりとなった1曲「Busy Earnin'」でライブの幕が開くと、さっそくフロアはダンスの衝動を煽られ、いきなりムードは最高潮に。さらに矢継ぎ早に『Volcano』から「Candle Flame」をプレイ。ジャングルの過去と現在がさっそく入り混じる。
こうしてバンドのディスコグラフィーの厚みを改めて感じることができるのもライブの醍醐味の一つだが、ここにはさらに意味を見出すことができるかもしれない。『Volcano』のリリースに際してNMEに掲載されたインタビューで、ジョシュは「Busy Earnin'」の収録されたファースト・アルバムから4年ほどの時間が掛かったセカンド・アルバム『For Ever』の制作を振り返ってこう語っている。「サイレンやホーン、その他すべてを鳴らしてみたり、3年間、次の“Busy Earnin'”を作ることをゲーム理論的に考えていた。同じ感覚は二度と得られないのに。人間はいつも昔の感覚に戻りたいと思うものだけど、新しい方法に向かわなきゃいけないんだ」。その言葉通り、ジャングルは新しい方法に向かい、時間を掛けすぎることなく制作されたのがサード・アルバム『Loving In Stereo』であり、それをさらに洗練した結果が『Volcano』である。だから、「Busy Earnin'」という過去の代表曲から始まり、現在のモードのジャングルへと繋がれると、そこには過去の自分たちを自分たちなりの方法で超えてきた、ジャングルのヒストリーが必然的に立ち上がるのだ。中盤でプレイされた新たな代表曲「Back On 74」での驚異的な盛り上がりも、このバンドにとって現在こそがピークであることを象徴していただろう。
演出面では「Candle Flame」などラッパーをフィーチャーした曲ではステージ後方のモニターに曲と同期したラッパーの映像が映し出されたり、ライブの終盤では客席に巨大なビーチボール(?)が投げ込まれたりとサプライズもありつつ進行。MCはほぼなし。基本的に次々に新旧織り交ぜ曲をプレイするので、休みなく踊ってばかりいることになるのだが、不思議と疲れを感じないのも驚きだった。おそらく、とりわけ『Volcano』が60〜70年代を思い起こさせるようなオーセンティックかつオーガニックなサウンドに傾倒しているのもその理由の一つなのだろう。ダンサブルで強力なグルーヴにはどこか余裕があった。ちなみにライブだと特にベースが強調され、その“踊れる”グルーヴを支えていたのも印象に残っている。そういうわけで、約70分間の本編はあっという間に過ぎていき、アンコールは「Keep Moving」。止まらず、過去に囚われずに進み続けるジャングルにぴったりの締めだろう。バンド・メンバー全員で肩を組んで一礼し、ジャングルはステージを後にした。
Text by 高久大輝
まずはサポート・アクトの森とチョモによる2人組、どんぐりずがエレクトリックなダンス・トラックにパワフルなラップを乗せ、景気良く夜をスタート。ソールドアウト公演とあって、フロアはすでにパンパンだ。開演前にはメイン・アクトのジャングルとどんぐりずの客層が違っているのではないかと危惧していたが、そんな心配は無用だったとすぐに気がつく。月曜の夜からジャングルで踊ろうとフロアに集まった観客にどんぐりずが刺さらないはずはないのだ。ゲストにNAGAN SERVERを呼び込んでさらにブチアゲて、約30分程でフロアをアッツアツにして、彼らは颯爽と去って行った。
30分ほどの転換を挟み、20:00ちょうどに暗転すると、いよいよメイン・アクト、ジャングルの登場だ。昨年リリースされた最新作『Volcano』を象徴するカラーであろう赤い照明とスモークの中、メンバーのシルエットが現れる。6人のバンド編成で、立ち位置的には左右対称。ステージに立っただけで少々うっとりしてしまうような美しさがある。そして、ジャングルの名刺代わりとなった1曲「Busy Earnin'」でライブの幕が開くと、さっそくフロアはダンスの衝動を煽られ、いきなりムードは最高潮に。さらに矢継ぎ早に『Volcano』から「Candle Flame」をプレイ。ジャングルの過去と現在がさっそく入り混じる。
こうしてバンドのディスコグラフィーの厚みを改めて感じることができるのもライブの醍醐味の一つだが、ここにはさらに意味を見出すことができるかもしれない。『Volcano』のリリースに際してNMEに掲載されたインタビューで、ジョシュは「Busy Earnin'」の収録されたファースト・アルバムから4年ほどの時間が掛かったセカンド・アルバム『For Ever』の制作を振り返ってこう語っている。「サイレンやホーン、その他すべてを鳴らしてみたり、3年間、次の“Busy Earnin'”を作ることをゲーム理論的に考えていた。同じ感覚は二度と得られないのに。人間はいつも昔の感覚に戻りたいと思うものだけど、新しい方法に向かわなきゃいけないんだ」。その言葉通り、ジャングルは新しい方法に向かい、時間を掛けすぎることなく制作されたのがサード・アルバム『Loving In Stereo』であり、それをさらに洗練した結果が『Volcano』である。だから、「Busy Earnin'」という過去の代表曲から始まり、現在のモードのジャングルへと繋がれると、そこには過去の自分たちを自分たちなりの方法で超えてきた、ジャングルのヒストリーが必然的に立ち上がるのだ。中盤でプレイされた新たな代表曲「Back On 74」での驚異的な盛り上がりも、このバンドにとって現在こそがピークであることを象徴していただろう。
演出面では「Candle Flame」などラッパーをフィーチャーした曲ではステージ後方のモニターに曲と同期したラッパーの映像が映し出されたり、ライブの終盤では客席に巨大なビーチボール(?)が投げ込まれたりとサプライズもありつつ進行。MCはほぼなし。基本的に次々に新旧織り交ぜ曲をプレイするので、休みなく踊ってばかりいることになるのだが、不思議と疲れを感じないのも驚きだった。おそらく、とりわけ『Volcano』が60〜70年代を思い起こさせるようなオーセンティックかつオーガニックなサウンドに傾倒しているのもその理由の一つなのだろう。ダンサブルで強力なグルーヴにはどこか余裕があった。ちなみにライブだと特にベースが強調され、その“踊れる”グルーヴを支えていたのも印象に残っている。そういうわけで、約70分間の本編はあっという間に過ぎていき、アンコールは「Keep Moving」。止まらず、過去に囚われずに進み続けるジャングルにぴったりの締めだろう。バンド・メンバー全員で肩を組んで一礼し、ジャングルはステージを後にした。
Text by 高久大輝