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ADRIAN SHERWOOD "Tackhead Sound Crash"解説書

それがどのように植民地主義と関係があるのか、イギリスは常に外からの新しい音楽を取り入れて、自らの血とし、肉として、次の時代を切り開くイギリスの音楽を作ってきた。ここでは、ポップ・ミュージックの話をしているので、例えば、レゲエが世界に広まるのに、どれだけイギリスが貢献したのか、もしくは、イギリス人が貢献したのか、それを考えてみるといい。そのことは、それほど単純な話ではないのは、冒頭に書いた通りだ。ポップ・ミュージックはビジネスであり、ビジネスである以上、アーティストとそれを売る側にある程度の軋轢があるだろう。しかし、その中で、イギリスのレーベルは、魅力的なカタログを提供してきたことは否定出来ない。
 1958年にロンドンのハイ・ウィカムという地域で生まれたエイドリアン・シャーウッドは、10代半ば以前にレゲエのサウンド・システムに出入りをするようになる。彼が、1980年代には多くの先駆的な仕事を残していることを考えると、彼は一種の早熟の鬼才だと考えられるが、彼の遊び人としてのキャリアも、まぁ、けっこう年季のはいったものだった、ということだ。
 彼が出入りしていたのはトワイライトというローカルなサウンド・システムで、彼はお定まりの通り、当初は早い時間にレゲエやファンクをDJとしてプレイしだす(当時、まだテクノもグライムも、ヒップホップもなかった)。
さて、レーベルの話を始めたのは、彼の友人がPAMAレコードというなかなかどうして魅力的なレーベルを所有していたので、エイドリアンもそこで働くようになるーー学校の休み時間に。
 17歳の時にもうレコード・ディストリビューターとしての資格を取得していた、のだから、彼がいかに情熱を持ってこの仕事に打ちこんでいたか、分かるだろう。「青春を音楽に捧げた」とは、日本のあるスカ・バンドのメンバーの母親が自分の子供に向けて言った言葉だが、エイドリアン・シャーウッドは、重症のレゲエ中毒だった。そして、あなたが今聞いているように、独自のーーここが重要??ヘウ゛ィな、20年も30年も時代の先をいっていたダブ・サウンドを作り出すようになるのだ。それは、呪術的なもので、彼がどこからこれを見つけてきたのか僕には見当がつかない種類のサウンドである。その意味で、エイドリアン・シャーウッドのサウンド・プロダクションは、錬金術的といってもいい。
ただ、ひとつ言えるのは、彼が単なるスタジオ内の密室性ではなく、その初期、DJをしていた経験の後、プロデュースを始めたりしたことは、彼の独自のサウンドに影響がある、と僕は考えている。
 なぜなら、彼が初期のレゲエーーまだ打ち込みが使われる遥か以前のレゲエにヘウ゛ィネスを感じとっていたからで、それはサウンド・システムでの経験がないと難しいからだ。
つまり、ベースにぶちのめされるという経験。圧倒的な音、に震え上がる、という経験、気を失うような音楽がこの世の中にあるのだ、と気がつく経験・・・これを打ち込み遥か以前のレゲエに感じとるのは、鋭敏な感覚がなければ出来ることではない。そして、彼がここでやっていることは、彼が聞いた音を再現するのではなく、彼がした経験をここで再現しようとしているのだ、と僕は考える。そして、それを受け取るか否かは、僕はあなた自身にかかっている、ということだ。
PAMAの後、カリブ・ジェムス、ヒット・ラン、というレーベルを設立していったエイドリアンだが、その頃はまだ1979年だった。79年!パンクから3、4年だ。その頃起っていた多くの出来事から言えば、本当にこの頃のイギリスの音楽シーンは実りが多かった、と言えるだろうし、またその規模から言えば、シーンは小さかった、とも言えるだろう。なにしろ、その頃集まっていたメンバーは、ほとんど変化がないのだから。そして、僕たちはニューウェイウ゛とレゲエの関係について考えを巡らすのだ。
 例えば、来日したドン・レッツがレゲエをパンク・ギグのフロントDJとしてレゲエをプレイした、という事実は分かっていても、なぜパンクがレゲエと一時でも、親しい、いい関係を持っていたのか、それは一見分かりにくい。しかし、例えば今年とうとう日本でも見ることが出来るようになった映画「ルーツ・ロック・レゲエ」や「ロッカーズ」、もしくは「ハーダー・ゼイ・カム」といった映画を見るだけでも、それがある種のスタイル、部族性を持ったものとして共闘出来、またメッセージの共感を両者が得たのだ、とは想像出来ないだろうか?そして、そうした、一見、異端と思える何かを自分たちの裡へ、裡へと発見していく姿勢こそが、イギリスのポップ・ミュージックの伝統であるということに気がつくと、もう少し分かりやすくなっていくのではないだろうか?
 伝統はすなわちメインストリームであるか?いや、そうではない。オアシスはメインストリームだが、彼らは異端ではない。ジェイムス・ブラントがラジオから流れてきても、彼の音楽を異端と考える人はいないだろう。だが、エイドリアン・シャーウッドは、異端であり、伝統を担っている。それがイギリスの音楽のもっとも誇るべきところだと僕は考えている。
 それがこのミックスCDには充満している。それは細菌のように危険だ。音楽は、まったく安心出来るものではない。音楽は、古臭い母親の好きなものではない。音楽は、フランシス・ベーコンの絵画のようだ。うっかりすると取り返しのつかない世界にあなたや僕はいることになる。そして、そのように想像力を働かすことが、音楽の、アートの貴族性であり、威厳のある部分であり、光り輝く、危ない厄介な点であるのだ。それが、例えば、あなたが聞いている時間の間だけ働くとしたら、あなたは、あなたの感性の鋭敏さを誇り、そして音楽の持つ危険な錬金術性、麻薬性について振り返るといい。このミックスCDはそのような音楽についてで、他ではない。



ADRIAN SHERWOOD "Tackhead Sound Crash"解説書(テキスト/右クリックでダウンロード)
ADRIAN SHERWOOD "Tackhead Sound Crash"商品詳細
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