ゼロ年代後半のブルックリン・ブームの中の末裔としてWARPから彗星の如く現れたジェイソン・フリードマンとエレノア・エヴァーデルによる男女デュオ、ザ・ハンドレッド・イン・ザ・ハンズ。ダブやオールド・ディスコ、アフロ・ビートにエレクトロやポスト・パンクなど、ありとあらゆるサウンドをポップに消化した作品群が話題となった彼らの最新作は一転、蠢くポスト・ダブステップ以降のミニマルなビート・プロダクションの隙間を漂うアトモスフェリックなムードと徹底して貫かれる耽美な美学を提示。ブリアル、ジェームス・ブレイクやThe XX、<Tri Angle>レーベルやグライムス、アパラットなど世界中で共振し合う時代の耽美なダークネスを壮大に更新する問題作に仕上がった。
ザ・ハンドレッド・イン・ザ・ハンズのセルフ・タイトルであるデビュー作は、リリース後すぐさま近年の新人の中でも最も説得力のあるアクトとしての地位を確立した。アルバムの世界ツアーの後、エレノア・エヴァーデルとジェイソン・フリードマンからなるこのデュオは薄暗いNYのスタジオへと戻り、<WARP RECORDS>から6/2にリリースされる魅惑的な作品『RED NIGHT』の制作を開始した。『RED NIGHT』はセルフ・プロデュース作品で、分離と再会の狭間にある瞑想、失われた愛と募る想い、デジタル、そしてアーバン・ミュージック全盛の時代における深夜に溢れかえる追憶の念である。
アルバムのオープナーである「Empty Station」(M-1)は印象的なストリングスで幕を開け、エレノアの魅惑的なヴォーカルと幾層にも重ねられた疾走感溢れるリズムが重ねられていく。「Come With Me」(M-3)は鋭利なギターとヒンヤリとしたキーボードがポリリズミックに躍動し、サイレン音がリリカルに鳴り響く。「Faded」(M-7)での悲痛な歌声は螺旋状に浮遊する鐘の音と儚いアレンジを包み込んでいる。ゴシックなR&Bキラー「Stay The Night」は妖艶な酩酊感を紡ぐ。「Lead In The Light」の壮大なサウンドスケープはゆっくりと異次元の絶頂へと登りつめ、再びゆっくり舞い戻ってくる。
「抒情的に鳴り響く暗闇からはじまり、傷心と特別なものを失う恐怖を抱えながら、微かな光を探し求める」
『RED NIGHT』はハンドレッド・イン・ザ・ハンズという夜行性の街へと続く曲がりくねったトンネルである。時間は歪み、テンポが落ち、物語が進むにつれ密度を増していく歌声に反してギターはつんのめりながら轟き、突き刺していく。バンドのジャンルを飛び越えた音はミニマリズムとアブストラクトなムードを内包しながら、そのメロディに耳を奪われるだろう。
彼らは2月末にはLAで行われたVice Partyでオッド・フューチャーやキッド・カディ、サンフランシスコで行われたCreators Projectではヤー・ヤー・ヤーズ、ジェームス・マーフィー、そしてスクエアプッシャーらと共演し、新曲を披露。熱狂的に迎えられている。
独特の世界観を携えたハンドレッド・イン・ザ・ハンズの『RED NIGHT』は、必ず今年を代表する一枚となるだろう。
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